日本政府も熱視線、アジア新興国市場の成長力:女流コンサルタント、アジアを歩く(4/5 ページ)
アジア新興国に対しては、日本政府や行政機関も熱い視線を注いでいる。民間企業とはとらえ方も異なるものの、日本の行政機関がアジア新興国進出をどのように考えているかを知っておくことは有効である。
日本企業が目を向けるべき方向
一方で、同氏は多くの日本企業に懸念も示す。バングラデシュには、さまざまな目的や狙いを持つ日本企業がやって来るが、多くの企業が日本、あるいは日本企業ばかりを見ているという。チャイナ+1やネクストチャイナを求める者、日本の閉塞感を打ち破ろうと考える者、企業イメージや評判を上げようと考える者など、日本や日本企業ばかりを見ている。
バングラデシュに来る人が日本や日本企業のことを考えるのは当然だが、それだけではバングラデシュの人々に見透かされてしまい、底の浅い付き合いしかできない可能性がある。バングラデシュ社会の将来性や国際社会における今後の位置づけについての理解をより一層深め、それぞれのビジネスプランを立てていくことが、中・長期的なビジネスの成功につながるのではなかろうか。
ニーズとビジネス機会
では、バングラデシュに目を向けたとき、そこにあるニーズとビジネス機会はどのようなものなのか。戸田氏に聞いた。
やはり、日本への期待が高く、日本企業として優位性があるといえる分野は技術分野であるという。最先端技術や工業技術だけでなく、生産管理や製品管理や顧客サービスといったオペレーション上の技術についても、日本企業の高いレベルがバングラデシュでも認知されており、この分野での期待は大きいようである。
興味深い分野として教育分野が挙げられる。バングラデシュの人々は教育熱心で、年収の多くの部分を子どもの教育に割いているそうだ。1975年には1世帯6.3人だった子どもの数は、家族計画が成功したこともあり、2007年には1世帯2.7人と減少した。少なくなった子どもたちに親がしっかりと投資して優秀な人材が育ちつつあるというのだ。
つまり、教育分野そのものに加え、こうした人材に目を付け、新たな分野を切り拓くための足掛かりにすることも考えられる。
近年、必要性が高まっている分野として、戸田氏はリサーチ分野を挙げた。バングラデシュでは、信頼に足り得る情報や体系的なデータがほとんど存在しない。局所的、かつ断片的な調査活動はあるが、広範囲でかつ継続的な調査活動がないため、正確な情報やデータが存在しないのである。
これは、政府にとっても、企業にとっても大きな課題になっている。裏を返せば、それだけ切望されており、リサーチ分野への取り組みは価値も大きい。
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