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言葉の耐えられない軽さ藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)

言葉を重要視せず、その場限りの言い繕いに終始していては、国民の信頼は得られない。

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透明化とは

 それだけではない。毎日、内閣官房長官が記者会見をしているが、その内容は冒頭の官房長官談話を除いてまったく公表されない。しかしこの記者会見で最も重要なのは、記者との一問一答である。常に「発言の一部だけを切り取られても」という言い方で、新聞報道などを批判するのなら、一問一答まで書き起こしてサイトで公表すべきなのである。実際、アメリカのオバマ政権は「米政治史上最も透明な政権を目指す」として、報道官による記者会見の速記録を公表している。

 もちろん報道官側の発表だけでなく、記者とのやりとりも公表しているのである(冗談まで入っている)。もちろん、こうした政府の活動をすべて文書化すると大変な労力が掛かるのは分かる。しかしそれだけのコストを掛けても、政治を透明化することによって、日本の政治は確実に変わるはずなのだ。

 公表されないという「安心感」からか、仙石官房長官は相手の論理の隙間を突くことに熱心で、その分、自分の言葉にスキが多いように思う。那覇地検の「外交的判断」は「諒とする」と言って、首相官邸が関与していないことを強調したのに、ビデオをリークした海上保安官に関しては「逮捕されないことが理解できない」と検察批判を展開した。司法は政治から独立すべきというのが持論ならば、これはおかしな話だ。

 また海上保安官を罰するべきではないという声が多いと記者が聞くと、「多いというのはどれぐらい多いのか。厳罰に処すべきという声が圧倒的多数であるとわたしは思う」と反論した。この言い方は論理的にまったくおかしいのである。記者には具体的な根拠がないだろうと責めておいて、自分は「と思う」と逃げて「圧倒的多数」という言葉を残した。

 これらのやり取りは日常的で些細な話ではあるが、実はそこに表れているのは、言葉を重要視せず、その場限りの言い繕いに終始する民主党の病根でもある。揚げ足を取るのは好きではないが、そこから民主党の病根を退治しない限り、この政権は短命に終わり、国民は限りなく深い政治不信の中に取り残されてしまいかねないのである。

 そうなったら、それでなくても弱っている日本経済はますます泥沼から抜け出すことができなくなる。「政治主導」で日本が沈没することなど願い下げである。

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著者プロフィール

藤田正美(ふじた まさよし)

『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。



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