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いま日本企業が目指すべき学習優位の戦略論――一橋大学の名和教授ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(4/4 ページ)

元マッキンゼー&カンパニーディレクターで、現在は一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の名和高司氏が「いま日本企業が目指すべき学習優位の戦略論」とのタイトルで、経営コンサルタントとしての永年の経験を元に日本企業の新たな成長戦略を語った。

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パナソニックの「中村改革」はなぜ成功したのか

 しかし、多くの会社はこうした動きでなく、違った動き方をしているようだ。

 例えば、市場開拓型といわれる会社は独自の動き方をしているという。「多くのベンチャー企業、昔のソニーやアップルなどは市場開拓型の会社といえる。「顧客洞察」と「組織DNA」だけに力を入れている会社である」、さらには、P&Gに代表される市場深耕型の会社がある。マーケットを常に見て、それに対するものが自社になかったら外から買ってくれば良いという会社で、「顧客洞察」と「顧客接点」の2つだけに力を入れている。

 資産深耕型の会社ではかつてのNTTや東京電力などが上げられる。

 「資産の上で殿様商売をしているような企業で、お客様がなんといおうと自分のものしか手に入らないのだという会社。“組織DNA”と“事業現場”の2つに力を入れている」

 そして、右の「顧客接点」と「事業現場」の間をクルクルと回っているような会社がある。現場深耕型の企業で、カイゼンを得意技とする平時のトヨタがその代表だ。

 「このように、<4+1>Boxの4つの隅をうまく使わずに、偏った動き方をしている企業が多い。そうではなくて、しっかりと4つの隅を使うようにしなければならない。それも「顧客接点」を出発点として、「組織DNA」、「顧客洞察」、「事業現場」へ移行するという動きで、それを何度も繰り返す必要がある」

 名和氏は講演の最後に、パナソニックが2000年から取り組んだ、いわゆる「中村改革」の成功の要因を紹介した。

 この中村改革は、2000年6月に松下電器産業(当時)の社長に就任した中村邦夫氏が「破壊と創造」を旗印に取り組んだ構造改革。当時、パナソニックは厳しい状況にあったが、そこでパナソニックの「事業の型」を改めて検討することにした。

 「中村改革までのパナソニックは典型的なプロダクトアウトの会社だった。もともと各事業部の力が強かった会社だが、そこで中村さんが最初にやったのは、マーケティング本部にすべてのパワーを集中させたこと。つまり、会社のパワーをさきほどの図の右上のボックスに持っていってしまった」

 マーケティング本部はそれまで、製品を量販店や自社のチェーン店に届けるといったコストセンターでしかなかった。しかしそこにP/L責任を持たせ、商品の価格や在庫などすべての責任も持たせることになった。そのためマーケティング本部は、本気で、売れるものしか事業として扱わないようになった。

「これによって、各事業部が新しい製品を作ったから売ってくれといっても、マーケティング本部が売れないと判断したらNOということになった」という。

 さらに取り組んだのが、図の左下の「組織DNA」への取り組みである。ここで“技術の棚卸し”を行い、パナソニックの強みはデジアナの変換にあるとして、デジカメなどでヒット商品を次々と生み出したという。

 日本企業が目指すのはスマート×リーンであり、それを実現するのは事業開発の<4+1>Boxを繰り返し検証することが重要という指摘だった。

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