一橋大の米倉氏――「若手技術者よ、Twitterをしている場合ではない」(4/4 ページ)
「クオリティ ガバナンスセミナー2010」の基調講演で、一橋大学イノベーション研究センター長・教授の米倉誠一郎氏は、アジアというフロンティアで戦うための戦略について語った。
アジア各地に広がるフロンティアへ
米倉氏自身、アジア各地を訪れ、さまざまなビジネスに触れている。中国で学生たちとコミュニケーションし、インドのタタ自動車で2000ドルの自動車に乗り、ベトナムで日本製バイクの浸透ぶりを実感し、バングラデシュでグラミン銀行の取り組みをつぶさに見てきたといった具合だ。
「貧しい女性を中心に低額の融資を行い、経済的な自立を助けるグラミン銀行の取り組みを見させてもらったとき、体中が熱くなった。わくわくしてきました。日本から社会人の学生を連れて視察をしにいったとき、グラミン銀行のグループ会社が行っている太陽光発電パネルの貸し出しサービス事業が話題になりました。その時学生たちは『今はいいけれどそのうち発展すれば大きな発電所が必要になる』と言っていました。確かにそういう側面もあるでしょう。しかし1平方メートル程度の太陽光集光パネルで動く家電製品を開発する、という分野も大きなフロンティアではないでしょうか。そして日本企業こそそのフロンティアに挑戦する最も強力なプレーヤーではないでしょうか」(米倉氏)
そのほか、米倉氏は近い将来日本以上に少子高齢化社会になる中国市場に、日本のロボット技術は大いに生かせる、と話す。ペットロボットは孤独な老人をウォッチし続け、安全を確保するのに役立つし、体に装着し重い荷物を軽々と持ち上げることができるロボットスーツなども介護に利用できる。米倉氏は日本人の特徴として、「ヒューマンインテリジェンスをクオリティオブライフに結び付ける能力」を挙げる。技術や知恵を生活に生かしていく発想をもっと磨いていくべきということなのだろう。自らの強みを知り、足りない部分を補う努力をすれば、底が知れない巨大なアジア市場も恐れるに足りずだ。
米倉氏は、最近日本の米国への留学生が減少し続けていることに懸念を示す。そしてこう締めくくった。
「米国に限らず、外へ出ていこう、何かを吸収しようという意欲が低下しているのではないか。3D映画を見て、ハイボールを飲んで、ツイッターばかりしている。最近の人気商品になぞらえるとそんな若者が増えているのかもしれない。しかしそんなことしている場合じゃない。特に若いエンジニアはどんどん海外に出るべきだ。タタの自動車に実際に乗ってみてください。どこにフロンティアがあるのか、分かるはずです」
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