いまだ健在の日本ブランド活用も、バンコクで考える新たなオフショアBPO:女流コンサルタント、アジアを歩く(3/3 ページ)
いまだに「日本ブランド」が健在だというタイで、BPOサービスを提供する企業を視察して見えた新しいサービスモデルやビジネスモデルについて考察する。
「日本人の、日本人による、日本人のためのビジネス」に必要な要素
わたしたちは、この「日本人の、日本人による、日本人のためのビジネス」について、議論を重ねた。この形をより円滑に合理的に進めるためには、オフショアBPOを手掛ける企業と海外でBPOサービスの担い手となる日本人との間で、Win-Winの関係を築き、相互に理解し協力する仕組みが整わなくてはならない。この要素がない限り、安定的なサービスの提供はできないだろう。
既に述べた通り、バンコクで生活する日本人の学生や若者は、その生活の糧となる職業機会があり、オフショアBPO企業もバンコク水準の賃金で日本語を使いこなせる要員を確保できるのは悪くない関係である。しかし、これをより一歩進め、真のWin-Winの関係を築くことが、このモデルを強固なものにする上で必要であろう。
これに関して、既に1つの取り組みがある。それは、単なる労働力として扱うのではなく、インターンシップとして海外での経験を支援し、ビジネスや勉学のサポートプログラムを併せて実施するといった取り組みである。これは、いわば、企業のCSR(Corporate Social Responsibility)活動やソーシャルビジネスといった社会貢献としても有意義であり、企業のマーケティング戦略上も有効なものであろう。
とはいえ、実際にサポートプログラムを体験している人の声を聞いてみると「業務に時間を取られてしまい、勉学のほうに注力できなかった」とか、「インターンシップを経験した後の就職口や自身の将来像が見えづらい」などの声もあり、まだまだ改善の余地があることも否めない。
そういった声を踏まえつつ、企業と個人とがWin-Winとなる関係を築き上げ、その上で「日本人の、日本人による、日本人のためのビジネス」を考えていくと、さらに新しいサービスモデルやビジネスモデルが思い浮かべることができるはずだ。
今後の新しいサービスモデルやビジネスモデル
「日本人の、日本人による、日本人のためのビジネス」、すなわち、日本向けのサービスや日本企業の業務を、海外にいる日本人が担うというモデルを発展させていくと、より大きな可能性を見出せるのではないか。
アジア新興国を訪ね、各国を廻っていてわたしが感じるのは、現地の人々が日本人に大きな関心を持っていることである。わたしが持っているもの、使っているもの、利用しているサービス、気に入っている娯楽・遊興などいろいろな質問を受けるのだ。日本自体が、今も1つのブランドとして認知されているといえる。
そう考えると、例えば、新興国で展開しようとする商品やサービスを、現地に住む日本人に積極的に利用してもらうようにすることで、それらの商品やサービスを宣伝することになるのではないか。商品やサービスをほとんど無料で利用できるというインセンティブを与える代わりに、海外現地に住む日本人に、宣伝・広報の役割を担ってもらうのである。
ほかにも「海外でもできる業務・サービス」と「海外でしかできない業務・サービス」を整理し、それを海外現地に住む日本人とWin-Winの関係で推進していくことができるものがあるはずである。
グローバル化が進み、日本の学生や若者だけでなく、社会人や高齢者なども世界の至るところに赴き、生活を営んでおり、それは今後加速できるだろう。そのような状況の中で、「日本人の、日本人による、日本人のためのビジネス」を基軸とした新しいサービスモデルやビジネスモデルが、今後発展していくのではないだろうか。
著者プロフィール
辻 佳子(つじ よしこ)
デロイト トーマツ コンサルティング所属コンサルタント。システムエンジニアを経た後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズにて、官公庁や製造業等の企業統合PMIに伴うBPR、大規模なアウトソーシング化/中国オフショア化のプロジェクトに従事。大連・上海・日本を行き来し、チームの運営・進行管理者としてブリッジ的な役割を担う。現在、デロイト トーマツ コンサルティング所属。中国+アジア途上国におけるビジネスのほか、IT、BPR、BPO/ITOの分野で活躍している。
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