変化に対応できるものだけが残る:『坂の上の雲』から学ぶビジネスの要諦(1/3 ページ)
いつの時代でも起こるのは、変化。この変化に対応できれば、新しい世界を経験できる。
「まことに小さな国が、開花期をむかえようとしている」という書き出しの『坂の上の雲』(司馬遼太郎、文春文庫)。そのドラマ化の第2段がNHKで放映開始になった。
2009年から3年にわたり一話1 時間30分で13話を放映している。その道の人によると、相当高い制作費が掛かっている。「テレビドラマではなく映画を見ているようだ」との評もよく耳にする。もちろん、わたし自身もこのドラマにしっかり魅了されている。
多くの経営者が『坂の上の雲』を座右の書としていると聞くが、その理由は、大きな志を持って、新しい時代を生き抜く主人公たちの青春物語であるからだろう。困難に立ち向かい、前向きに進む人間の生き方が鮮明に描かれている。
もう1つ理由があるとわたしは思う。志、人間力、行動力、リーダーシップなどビジネスの参考になることがこの物語の随所に書かれているからだ。
わたしは人から聞かれたら、若手には『竜馬がゆく』(司馬遼太郎、文春文庫)を、リーダークラス以上には『坂の上の雲』を読むことを強くお勧めしている。
前者はストーリーが分かりやすく、若手が共感できるところが多い。後者は登場人物や描かれている場面の数が多く、どちらかというと経験者向きだからだ。ちなみに、次回の連載以降にご紹介したいが、この2つの名著は、共通するテーマを持っているとわたしは思っている。
『坂の上の雲』全8巻を読んで(もしくは、読み返して)、ビジネスの参考になる場面を発見するのも楽しいことだと思う。もしくは、わたしが取り上げていく場面でとりあえず本連載にお付き合いいただくのも幸甚の至りである。
ちなみに、わたしは「仕事で大事なことは『坂の上の雲』が教えてくれた」(古川裕倫、三笠書房知的生き方文庫)を昨年出版した。一部重複することがあるかもしれないが、この物語の何度目かの読み直しをしながら、新しい発見もしていきたい。
『坂の上の雲』の主人公
この物語(『坂之上の雲』)の主人公は3人。
- 秋山好古(あきやまよしふる)
- 秋山真之(あきやまさねゆき)
- 正岡子規(まさおかしき)
好古は、安政6年(1859年)生まれ、明治維新の9年前である。武士ではあるが、松山藩の財政も苦しく、貧乏な幼年時代を過ごした。陸軍士官学校卒業。世界最強のロシアコサック騎兵の攻撃を阻止し、日本騎兵を立ち上げた。陸軍大将を経て、故郷松山で北予中学校(現愛媛県立北高等学校)の校長となった。
弟の真之は、慶應4年(1868年)生まれ。正岡子規とともに一時東京帝国大学を目指すが、海軍志望と転じ、海軍兵学校を主席で卒業した。ロシアのバルチック艦隊を日本海海戦で撃滅した連合艦隊の名参謀。
正岡子規は、慶応3年(1867年)生まれ。ちなみに同年11月に徳川幕府が大政奉還を行った。東京帝国大学文学部で学び、新聞記者となり、俳句、短歌など近代文学に多大な影響を及ぼした。36歳で病死。真之の親友であり、夏目漱石とも親しかった。
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