変化に対応できるものだけが残る:『坂の上の雲』から学ぶビジネスの要諦(2/3 ページ)
いつの時代でも起こるのは、変化。この変化に対応できれば、新しい世界を経験できる。
大きな変化のあった時代背景
270年続いた徳川幕府の鎖国時代が終わり、明治になって何が変わったか。江戸時代、国とは藩を指し、藩に生まれてそこから一歩も外に出ないで一生を過ごした人がほとんどだった。江戸末期の日本の人口は3400万人ほどであり、その85%が農民で、残りの半分が武士と町人。いわゆる士農工商という身分制度が、人が生まれた瞬間からその職業や将来を決めていた。
その後、たった140年で人口が4倍近くになったのは、産業を含めた国力が急成長したに他ならない。大きな変化があったからだ。
「生まれたからには日本一になりたい」(真之、『坂の上の雲』(司馬遼太郎、文春文庫、1巻192頁)
(子規は)時代の子であるだけにその志向はひどく陽気で、懐疑も皮肉も屈折も感じていない。なにしろ「朝ニアッテハ大政大臣、野ニアッテハ国会議長」と思って東京に出てきた青年なのである。(1巻192頁)
身分制度が終わり、どこに住んでもよいという住居自由の時代となった。ある日突然このように世の中が大きくまた急速に変化した。新聞が発刊され、郵便が始まり、だれもが通える学校ができ、西洋からの技術がどんどん取り入れられた。福澤諭吉先生の書物によれば、それを実行している政府を、明治の人々は尊敬と畏敬の念で見ていたとのことだ。
そんなときに、高い志を持つ行動力の高い若者が現れた。身分や裕福さなど関係ない、まさに実力の世界に、ひとすじの雲を目指して、若者は坂を駆け上っていった。この物語の主人公は皆、10代で東京に出てきて、その後海外にも行った。開国後のグローバリゼーションの幕開けといっても過言ではない。
変化に対応しなければいけない
今は、通信革命、そして情報革命の時代である。世界のリーディングカンパニーのいくつかが通信やインターネット関連である。時代の流れを見た起業が増え、業種を変化させる会社もあり、千差万別だが、長期的に見ると、新しいことに挑戦し、変化に対応できるものだけが残っていくであろう。
ダーウィンは、「残るものは、強いものでもなく、賢いものでもない。変化に対応できるものだけが残る」と言ったという。ライオンは強いし、チンパンジーや人間は頭がいい。しかし、それらがずっと生き残るという保証はない。
今儲かっている会社もあり、頭のよい社員を多く抱える企業もある。情報も過去に比較にならないほどたくさん簡単に手に入る。そんな中で、生き続ける会社は、変化に対応できる会社であり、社員が変化できる会社である。
明治5年に新橋・横浜間で鉄道が敷かれたことは、ご承知の通りである。江戸時代末期の江戸の人口は約100万人で、世界的な大都会だった。当時交通手段としてカゴがよく使われていた。時代劇に出てくる武士やお金持ちが乗る黒塗りの木製の上カゴから、出入り口がムシロのような一般向けのカゴもあり、江戸には大勢のカゴかきがいた。
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