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“就活早期化是正”議論は相変わらずヒトゴト、日本が壊れる!生き残れない経営(2/3 ページ)

新卒の就職活動が早期化することの弊害を憂えて、その是正を求める議論がここのところまた盛んになっている。

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 では改めて問うと、就活早期化・長期化が何故問題なのか。大学・企業双方にとって問題がある。大学にとって、何よりも就活で学業が疎かになり大学教育が空洞化する。企業にとっては、1.学生の成長や成果を見極めずに早期に内々定を出すことになる、2.早期離職者多発の遠因になる(これは、学生にとっても不幸)、3.新入社員教育と採用と重なり、人事の負担になるなど。

 一方、現状を肯定する意見にも耳を傾けなければならないが、その言い分として、1.早期化が是正され、受験機会が夏以降に圧縮されると受験企業数が減り、学生にとって一発勝負になって就活期間中に内定が取れず行き場を失う学生が増える、2.就活時期を遅らせたからといって学生が勉強するかは別問題、としている(就職情報サービス会社幹部、日本経済新聞’10.10.11.)。しかし、現状肯定者の論拠は本末転倒も甚だしい。「大学教育空洞化」の問題を、何にも優先して考えなければならないのに。

 では、どうすればいいのか。1つの策は、日本貿易会提言のように新卒者採用時期を遅らせることだろう。ほかの策として、大学夏休み期間中にインターンシップで学生を受け入れ、そこで選考をすれば学業の妨げにはならない。あるいは、交際交流基金小倉理事長の提言は大いに傾聴に値するが、3年生を相手に採用活動をしない企業を対象に法人税を減税し、採用活動が立派な企業を毎年ランキング発表する(日本経済新聞’10.11.5.)、というもの。このくらいの思い切った手を打たなければなるまい。さらに、8月に出された日本学術会議の提言は中長期的視点に立ち、しかも具体論が展開されていて、優れた内容である。その中で、学生が授業より就活を優先せざるを得ない現状に対する当面の対応として、

 1.学事日程と就活が両立するよう大学と産業界とが協働し、土日祝日や長期休暇の有効活用などの具体的なルールやプロセスを整備する、2.卒業後3年程度は若年既卒者に新卒としての採用の門戸を開く、など5点を挙げた〈日本経済新聞 ’10.10.11.)。

 ところで卒業後3年を新卒扱いとする案は、11月15日に厚労省が若年者の雇用指針に盛り込んだ(日本経済新聞’10.11.16.)が、罰則規定のない指針は無意味だ(ということに、厚労省は気づかないのか。いや、気づかないふりをして、建前を示しただけだろう)。

 罰則がなければ、実際の採用現場では最初から「卒後何年」と選別されるだろう。現実は甘くない、という好例がある。企業は採用をすべての大学に開放しているというが、実態は就職説明会を50%の企業は10大学に、80%の企業は20大学に絞っていて、それ以外の問い合わせには「会場がもう満杯」とか、無反応を決め込む。その証拠に、何社からも「もう満杯」と断られた某大学生が試しに「東大生」として問い合わせをしたら、次々の企業から返信があったという(11/24 BSフジプライムニュース20:00 〜 より)。……ということは、建前は卒業後3年間新卒扱いとされても、真の新卒以外はほとんど最初の段階で選別されるだろう。

 だから、以上の諸提案には罰則が伴わなければならないのだ。

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