“就活早期化是正”議論は相変わらずヒトゴト、日本が壊れる!:生き残れない経営(3/3 ページ)
新卒の就職活動が早期化することの弊害を憂えて、その是正を求める議論がここのところまた盛んになっている。
さて、そもそも何故就活や新卒採用にこれほど問題が起こるのかの根本原因を突き詰めて考えないと、場当たり的対策ばかりが横行して、根本的解決策が見つからない。
高度成長期の採用システムをいまだに引きずっているのが、そもそもの問題の始まりだ。客観的・主観的状況が、大きく変わってしまっている。経済はグローバル化し、世界の経済力バランスが変化し、企業が影響を受ける要因は増えて、しかも予測がつかない。
つまり企業は、予想外の環境の変化に素早く対応することを迫られ、多様化もした。社会構造も変貌し、その中で雇用形態が変わり、大学・学生の側も数の上でも質の上でも変化した。求める人材も、供給する人材も、変化している。そういう中で、就活・採用活動だけが画一的人材を求めるような伝統的方法に固執している。そこに根本的問題がある。
企業が早期採用、その主要原因である一括採用を続ける限り、大学教育の空洞化、そこを供給源とする企業の人材の質的低下、そしてやがて日本企業や経済の弱体化につながる。早急な対策が求められている。しかも、伝統的方法から脱却しなければならない。
まず、当面打てる対策を打つ。例えば、長期休暇を就活に利用する、採用開始時期を4カ月遅らせる(実は、キャノンマーケッティングジャパンでは今年採用活動を4カ月遅らせた。その結果エントリーも受験者も前年より増え、応募人材も多様化したという実績がある)、あるいは卒業3年間は新卒扱いとするなどを、国の方針として示し、遵守者には減税などの奨励金を出す、違反者には課徴金などの罰則を課すことが要だ。奨励金や罰則がなければ全く意味がない。外資系だろうが何だろうが、国内採用企業に厳格に適用すべきだ。
将来的には、欧米で大学卒業後に多様な社会経験をしてから20代後半に職業を決めるように、新卒一括採用から通年採用に切り替えることだ。適時適材の採用こそが、供給側の人材の質を高め、需要側の企業体質を強めることにつながり、時代の変化に対応できる。
これらの施策は、経済団体や教育団体だけでは限界があることを過去が示している。いわんや一企業や一業界が提言をしたくらいで、事態は変わらない。クリアしなければならない条件も多い。国としての施策が、早急に求められる。当面の対策と通年採用を実現するために、首相直属の諮問組織を直ちに立ち上げて、検討に入るべきだ。とにかく急ぐ!
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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