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日本から離れてみて分かる日本の底力とはエーゲ海から風のたより(2/2 ページ)

今どき、海外に生活していても、インターネットさえ繋がれば、日本の状況はどこにいても時差なく知ることができる。文字情報で配信されるニュースはいうに及ばず、オンタイムで日本のテレビを見たりラジオを聞くこともできる。

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今こそ、日本人のルーツに思いをはせる

 日本人のルーツには、このように逆境に耐え、不遇な時期であっても希望を失わずに努力を続けるという素晴らしい資質がある。これは一朝一夕に築けるものではないし、まして一夜にして失うこともない特質といえる。大切なことは、自分を信じて、継続することである。この背景として、日本人には、長い歴史を通して、忍耐強く創意工夫と試行錯誤を積み重ね、よりよいものを生み出すという潜在能力が育成されている。今こそ、この潜在能力を覚醒させて、困難な時期に立ち向かうことが大切である。

 海外に在住しているメリットの1つは、外から日本を見つめ直す機会が持てることだと思う。日本から海外を見ると、海を隔てて果てしなく広大な世界に思えるが、海外から日本を見ると、他国との比較を通して、客観的に日本の状況を判断することができる。

 トルコ人学生に日本人の印象を尋ねると、「几帳面」「勤勉」「集団行動」「礼儀正しい」「高い技術力から高品質の製品を生み出す国民」といった回答がすぐに返ってくる。これは、今まで講義をしたことがある複数の国々(米国、英国、仏国、中国、台湾、フィリピン)でも共通している日本人観だ。ある程度、美化されている部分もあるだろうが、各国の若者が自国と比べて受ける日本人の印象には、共通した部分がある。この共通部分は、在米日系人の特質と同じであり、日本人として潜在的に身に付いている特徴、習慣、能力といえるだろう。これらの特質は、外国人にはまねしたくても、そう簡単にまねすることができない日本人の美徳であり、強みなのである。


日本イズミル文化交流友好協会の人々(写真撮影:Mehmet DULGER)

よりよい日本になるために

 「一体、日本は、これからどこへ向かうのだろう?」これは、今、多くの日本人が考えていることであろう。その答えを探るために、まずは、日本社会全体が、日本人としてのアイデンティティーと特質への自信を再認識することが大切だと思う。そうすれば、自ずと歩むべき方向性が見えてくるはずである。また、近年、若年層が海外に行くことに消極的になってきているという話をよく聞くが、これは大変残念なことだと思う。

 新しいメンタルマップや発想を生み出すのに一番大切なことは、「経験による学習」である。特に、若い時のはつらつとした感性や柔軟性を通して、グローバルな視野から日本を見つめなおすことは、必ずや一生の財産になる。日本から離れてみて、改めて理解できる日本の良さや歩むべき方向が必ず見えてくるはずである。

 次世代を担う日本人には、ぜひ海外から日本を見つめなおし、日本人の特質が備わっていることに自信をもって、他所のまねではない、自分のやりたいことを実行してもらいたい。それが、日本という国のこれからを作っていくはずである。

 本連載の最後にあたり、連載企画をご提案いただき、的確なリード文をつけていただいたITmedia エグゼクティブの福盛田結花さんにお礼を申し上げたい。また、DULGER夫妻には写真提供に加え、現地の視点から執筆内容に妥当なコメントをいただいた。ここに記して謝意を表したい。

 本稿を執筆中の3月11日に、東日本大地震が発生しました。被災された多数のかたがたにお見舞申し上げるとともに、日本の復興に向けて昼夜尽力されている皆さんに心より感謝の意を表します。

 トルコも地震国として歴史上数多くの大地震を経験しており、1999年8月には、トルコ北西部でM7.4の震災により2万人を超える犠牲者を出している。この時は、日本から国際救援隊の一つとして、現地入りし支援活動を展開した。今回の東日本大地震でもトルコから救援隊3チームが支援活動のため震災地入りしている。

著者プロフィール

永井 裕久(ながい ひろひさ)

筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授(海外研修休業中)、イズミル経済大学大学院経営科学研究科教授。専門は、組織行動学、人材開発。現在、イズミル経済大学においてMBA講義科目(Dynamics of Organization, Leadership Seminar, Organizational Behavior)を担当する傍ら、アジアと欧州の研究者と連携して、グローバルリーダーシップ・コンピテンシーのメタ認知学習に関する国際比較プロジェクトを進めている。編著書に、『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』ナカニシヤ出版(2009),『パフォーマンスを生み出すグローバルリーダーの条件』白桃書房 (2005)他、共著書、学術論文多数。


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