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キャリアショックに負けない50代社員の活用とメンタルタフネス強化策50代ミドルを輝かせるキャリア開発支援(3/3 ページ)

肩書が無くなり、給与がダウンする中で、人は自分を守るために「心の固さ」を増す。前向きな組織にするためには心の固さを解きほぐし、強い心を培う必要がある。

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「援助・救済的支援」か、「自立・課題解決的支援」か=企業ぐるみで行う50代社員の支援策

 さて、このような環境適応能力を社員に体得してもらうには、企業として、どのような態度で支援を行うべきであろうか。50代層は、役職定年など幾度かのキャリアショックの試練を経ながら、最終的には退職に至る。企業としては、立場が変わっても生産性を落とさず、力一杯働いてもらいたいはずだ。支援はこのタイミングと期間、頻度が大事だ。

 支援には2つの考えかたがあるという。1つは「援助・救済的支援(困っているから助ける)」と、「自立・課題解決的支援(目標達成を応援する)」だ。支援は、過剰関与や救済的になりすぎてはいけない。この2つを、個人のキャリアチェンジの訪れ、始まり、初期適応、適応中、適応完了の各段階で使い分けることが必要だ。また、新たな環境に適合する際のキャリアショックは、本人の「心の固さ」の程度と現実的困難度合いによって異なる。自己活用能力の芽生えや定着も個人差が大きいため、一律の対応はなじまない。個別の支援と共通支援の組み合わせが必要だろう。

 支援の順序は、ショックの程度に応じ、初期は「援助・救済的支援」から始め、環境認識が出来、自分の適応課題が見えてきたあたりから、「自立・課題解決的支援」に移るのが通例だ。方法としては上司による個人面談中心の場合もあれば、キャリアデザイン研修などであらかじめ自己課題を考えさせてから、上司やキャリア相談室による、支援を組み合わせる場合もある。

 支援のゴールは、「自分をこの会社でどのように生かし続けるかは、自分自身の責任でもある」ということが分かり、自らの実践活動ができることだ。組織の中で自律的に生きるとはどういうことか、自ら考えさせることが大切だ。これには本人に対するキャリアデザイン研修や上司面談、キャリアカウンセリングなども大切だが、もっと大切な事は、企業ぐるみで、50代の活性化・活用支援に取組むことだ。少々のキャリアショックに負けず、あと10年頑張ってもらう仕組みや制度・施策を作り出すことが必要だ。

 経営トップ層には、自社の50代社員の活用度合いを高める号令を出してもらい、人事部門は全社の活性化・活用プロジェクトを推進していく。上司層は現場での有効活用を考える・組織や部下層には、協働意識を醸成し、積極的に50代社員のノウハウを吸収する機会を増やす。そして50代社員は、あと10年頑張るためのキャリア活用に取組む。このような取り組みを、持続的に続けながら、50代社員が肩身の狭い思いをすることなく、全力を尽くせる職場環境を作り出すことだ。その支援の構図を図表3に示しておく。

 次回はいよいよ最終稿だ。これまでの連載のまとめと企業が取り組むべき課題について述べていきたい。


図表3:企業ぐるみで行う50代社員の組織適合とメンタルタフネス支援策

著者プロフィール:片山 繁載(かたやましげとし)

1953年生まれ。大学卒業後、日本マンパワーに入社。教育事業部長、人材開発営業本部長を経て、その後再就職支援事業部門を立上げキャリアカウンセラー&人事・キャリアコンサルタントとして事業に従事。1997年以降、キャリア支援コンサルタント、キャリア・デザイン・プログラムの開発・インストラクター、キャリアカウンセリングなどを経験。現在教育研修&人材事業担当取締役。CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)、メンタルヘルスマスター。


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