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「モノ作り」を超える新たな価値を作り出すべき――関西大学・川上教授(2/2 ページ)

「顧客志向」と一口に言っても、その直接の言葉を聞くだけでは不十分だ。顧客の実際の行動を観察するなど、潜在ニーズの発掘に積極的に取り組み、新たな価値を生み出すべく社内の各部門が連携していくことが求められる。

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顧客志向を積極的に取り入れて新たな価値を作り出すことが重要

 なかなかヒット商品を作り出せず、これまで培ってきた技術力に自信を失いかけているように思える日本メーカー。しかし川上氏は、「技術力を捨てる必要はない」と断言する。

 「日本企業が目指すべきは米国型の価値創造ではないと考えている。日本は米国でも中国でもない。技術力は大事にすべき。日本企業は小型化指向が強く、すり合わせ開発を得意としている。そこには今後も注力していくべきだろう」(川上氏)

 むしろ、その技術力に加えて顧客志向を強めていくべきだというのだ。各社が同じ方向性で競い合っていけば同質化していってしまい、過当競争をもたらす。顧客志向を強化することで各社が独自の価値を作り出すことができ、競争回避へ向かっていくことが望ましい姿だ。

 例えば電子ブック端末についてみれば、日本ではkindleが登場するよりずっと早い2000年代初頭に電子ブック端末を各社が売り出していた。しかし結果として定着することなく消え去った。こうした過去の日本の電子ブック端末とkindleとの最大の違いは、コンテンツ数にある。

 「エジソンは電球を実用化しただけでなく、発電機や送電技術などトータルな電灯システムを作っていた。イノベーションはモノづくりに留まらない。その点を見落としてはいけない」と川上氏は指摘する。モノづくりだけでなく、同時にビジネスモデルを打ち出していくことができたなら、そして市場を作り上げていけたなら、ひょっとしたら日本の電子ブック端末が世界を席巻していたかもしれない。

 「性能で競う他社と同一軸での競争を避け、新しい遊び方を提案することでより多くの売上を実現したWiiなど、日本企業の顧客志向事例は海外の学会でも取り上げられる。アメリカではベンチャー企業が担う破壊的イノベーションを、日本では既存の大企業が次々と実現している。日本の企業は、モノづくりの水準そのものは変えることなく、マーケティングやデザインもバランス良く力を入れて、国内市場への過剰適応を避けつつ、かつ日本ならではの新たな価値を創造していく必要がある」(川上氏)

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