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九電の「やらせメール」が教えてくれたこと『坂の上の雲』から学ぶビジネスの要諦(1/3 ページ)

「わが社の常識は世間の非常識」ということがよくある。変わらぬ企業体質は、会社を潰すことにもつながりかねない。

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やらせメールと社員参加の県民説明会

 マスコミで九電の評判が極めて悪いが、最近のニュースを2つ整理しておきたい。

 (1)6月26日の公開番組

 定期点検中である玄海2、3号機の再稼働の可否を巡る国主催の県民説明生番組でのやらせメール投稿問題。

 ・九電の元副社長と元原子力本部長、佐賀支店長の3人が「再稼働に賛成する意見の投稿を増やす必要がある」ことに一致、意を受けた部下が、社内外2935人に再稼働賛同のメールを番組宛に送るように依頼した。

 ・本番組に投稿された原発再開に関する意見は全体で286件、反対は163件。(以上九電の調査報告書による)

 九電関係者は、鹿児島県議会の特別委員会で、「上司から『参加者を増やし、説明番組の議論を活性化させてほしい』と指示され、部下に番組の周知を指示した」と述べた。「具体的にフォローしなかったため、部下が安易に(メール送信依頼を)要請してしまった」、具体的内容は指示しておらず「常識的な範囲でやっていると思った」との発言をした。

 3点驚いてしまった。

 先ず、内容は具体的に指示しなかったとあるが、3,000名近くにメールを送っている。個人的に30通メールを送るのも相当手間がかかるのに、3,000通送るというのはたいへんな作業である。普通に考えると、組織としての全社通達という手段しか思いつかない。

 次に、九電関係者によるやらせに投稿は141件で、ほとんど賛成とみられることから、差し引きすると賛否が逆転する。とんでもない説明会の結果である。更に、さかのぼって九電は7月4日の鹿児島県議会では、やらせメールを否定、11日では「部下の独断」としていた。

 (2)7月8日の県民説明会(佐賀県多久市)

 多久市での説明会の定員は370人。応募総数は1,092人で、内428人が九電関係者で、当日の参加者約350人中の63人を占めた。参加者の20%近くが九電関係者である。

 7月4日の鹿児島県議会での説明では、本説明会に九電関係者は「実際に参加した人はほとんどいないのではないか」としていた。いい加減な発言である。

体質の変わらない会社とは

 テレビ番組のやらせや偽装事件などこれまでにいやというほど問題になってきたのに、地域会社の雄の登場はいただけない。更に、昨年引退したとはいえ、言い出したのが取締役というのが大問題である。企業のコンプライアンスやガバナンスが問題になってずいぶん久しいが、企業ぐるみと言われてもおかしくない。

 時代とともに企業は変化していかなければいけない。また、自社が生き残るだけではなく社会と調和していかなければいけない。(本連載「変化に対応できるものだけが残る」参照)

 独断と偏見で言うと、変わりにくい会社は、歴史の古い会社、儲かっている会社、独占企業、政府系、免許事業者などである。「常識的な範囲でやっていると思った」とのコメントに表れているように九電と世間の常識はずいぶん違うのではないか。

 本件については、経済産業省資源エネルギー庁や知事・議会などに謝罪しているが、どっちを向いて謝っているのかとクビを傾げたくなる。謝るべきは、電気代を払っている地域内の電力ユーザーであり、原発の事故リスクを負っている地元民に対してである。お上や行政の方を見て仕事をしているのが当たり前になっているのに体質の古さを感じる。

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