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【第2回】チームにはびこる「社会的手抜き」チームワーク 2.0(1/2 ページ)

チームワークによって多くの効果が期待できる一方で、集団活動がチームにマイナスの作用を与える場合もあります。今回はその側面を見ていきましょう。

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チームワークが有効な新製品開発

 前回は、職能組織を横断して編成されるチームによって仕事を進めていく組織のマネジメントを「チームワーク2.0」と呼び、その導入効果を紹介しました。

 折しも、9月27日付の日経新聞「経済教室」で、新製品開発におけるチームワークについて解説がありました。早稲田大学の恩蔵直人教授は、新製品開発は、マーケティング、企画、デザイン、営業、研究開発など異なる領域からのメンバーが参加する職能横断的チームが有効であると述べています。事例として、BMW、サムスン電子、ワールプール、P&Gなどでの新製品開発にチーム制が採用されているとのことです。例えば、P&Gは、社外のメンバーと開発チームを構成して新製品を開発する「コネクト・アンド・デベロップ戦略」を推進しています。2006年には、社外で開発された要素を利用する割合が35%に上ったようです。

 チームワーク2.0は、社内の組織だけでなく、会社を横断するチームにも当てはまる考え方です。今後は、このようなクロスボーダーのチームワークの機会が増えていくと思います。

集団がチームに与えるマイナス面

 チームというのは、とても有効な組織の形ではないかと期待させます。だからといって、部門の名前を「○○チーム」に変えただけでは意味がありません。チームワーク2.0に多くの効果が期待できる一方で、人が集団で活動することがチームにマイナスの作用を与える場合があります。チームワークを有効に経営の仕組みとして活用するためには、集団のマイナスの作用を理解し、それをリカバーするためのスキルを、経営者、チームリーダー、およびチームメンバーが修得しておくことが必要です。また、経営者やマネジャーは、これらの点を踏まえた、組織運営上の制度や評価の制度などを導入する必要があります。

 それでは、マイナス面をいくつか見てみることにしましょう。

 前回、複数人での綱引きを話題に出しました。7人の人間それぞれが単独で最大限に発揮できる力を測っておき、一緒に綱を引いたときの力と比べるという実験によると、理論的には綱を引く力の最大は全員の力の合計になるはずですが、何回実験を重ねても、平均で合計の75%にしかなりませんでした。よいチームは、1+1の力が3にも4にもなるといいますが、期待とは裏腹に、多くの研究でチームのパフォーマンスはそのメンバーの最大のパフォーマンスの合計に満たないことが明らかになっています。

 これは、運動能力だけでなく、知的な仕事についても同じようなことが起きています。ブレーンストーミングはアイデアを創造する知的な仕事です。一人でやるよりチームでやったほうが、より良いアイデアがでると期待されますが、実験ではこれを裏切る結果が出ています。

 まず5人が別々に5分間、アイデアを考え、出されたアイデアを合計します。このとき、重複したものは1つとします。次に5人のチームになって5分間でアイデアを出します。個人の合計が平均68だったのに対し、チームでは平均37のアイデアしか出せませんでした。このような実験は、これまで数多くされていますが、いずれも同じような結果になっています。

 これらは、「チームの成果=チームメンバーの成果の合計」というタイプの仕事でした。このことを「加算型タスク」といいます。もし人間がチームになるといっそう力を発揮するとしたら、「チームの成果>チームメンバーの成果の合計」になるはずです。しかし、結果は反対でした。

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