顧客との対話、そして企業の開放が「ソーシャル」の勘所:Lotusphere 2012 Orlando Report(2/2 ページ)
フロリダ州オーランドで開催中の「Lotusphere 2012」は2日目を迎え、午前の基調講演では、リーダーシップに焦点が当てられ、このカンファレンスが技術者だけでなく、経営層やLOBに向けた取り組みであることを印象付けた。
社外の優れた能力を活用することが成否を分ける
「今やそこそこの商品やサービスでは生き残れない時代」と話すのはビジネス誌「Fast Company」の創刊編集長、ビル・テイラー氏だ。
商品やサービスが溢れている今の市場では、少しばかり機能や品質が良い、あるいは多少コストが安い、といった、まあまあの経済的な価値では消費者を引き付けられない。テイラー氏は、突出した価値として、21世紀の病院を目指したミシガン州のHenry Ford Hospitalを例に挙げた。およそ病院らしくない、まるでリゾートビレッジのような施設でホテル並みのサービスが提供され、食事も素晴らしいと評判を呼んでいる。
そうした高級志向でなくとも、組織を挙げて顧客を理解することで特別な存在になっている企業もある。テキサス州サンアントニオに本社を置く、軍関係者を対象にした金融保険会社、USAAだ。総勢1万3000人にも上るカスタマーサービスの社員教育に力を入れ、顧客を理解する企業文化を浸透させている。
「顧客は国内外の基地で働く兵士。研修では彼らと同じ食事や訓練を体験させ、兵士と家族がやり取りする手紙も読む。理解することで顧客と社員の特別な関係を築いている」(テイラー氏)
USAAの例でも分かるとおり、どのような組織になりたいのか? それが極めて重要だ。そして、ソーシャルソフトウェアのような技術は、その取り組みを加速し、企業の競争優位性を高めてくれることに大いに役立つ。人と人のコミュニケーションを可視化し、分析することでナレッジの抽出も容易となり、その蓄積が企業の貴重な資産となる。しかし、その適用は今後、企業の外側へと拡大していくはずだ。それは、パートナーや顧客といった社外の優れた能力を活用することが成否を分けるようになるからだ。
経営層やLOB向けに今年初めて併催された「Connect 2012」のクロージングセッションでは、「Collective Intelligence」(集合知)をテーマに掲げ、企業内外のナレッジや専門知識をソーシャルによって活用し、製品やサービスの開発だけでなく、ベストプラクティスの共有、負荷の高い仕事の分業、あるいは将来予測に役立てる具体的な手法も紹介された。
「これからの企業は、社外の有能な人材や消費者に企業を開放し、世の中の変化に素早く対応していくことが求められるだろう」とテイラー氏。これこそがソーシャル導入の「勘所」かもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ソーシャル熱に潜む落とし穴、失敗しないビジネス変革の方法とは?
「Lotusphere 2012」がフロリダ州オーランドのウォルトディズニーワールドで開幕した。「落とし穴が潜む」とIBM幹部が指摘する「ソーシャル」、その導入・普及を成功させた欧米先進企業の取り組みが数多く紹介されている。 - ソーシャルはゲームを変える好機、経営陣の関与が成否を分ける
- ソーシャル! ソーシャル! ソーシャル! Lotus Notesは20年前からソーシャルだった!?
- IBM Project Vulcan=Google Wave+Facebook+B
- 厳しいビジネス環境、コラボレーションこそが転換のチャンス
- グローバル企業での活用が進むLotus
- IBM、コラボレーションの未来コンセプト「Project Vulcan」発表