第二幕:開演
演じる役柄の気持ちや感情、考え方や精神状態を伝えなければなりません。そうするためには、その役柄の動機を理解し、投影しなければなりません。同じように、売り込みをしようという気にさせてくれるインスピレーションを考えてみて下さい。
もちろん、コミッションは大きな動機になるでしょう。しかし、おそらくそれ以上のものが必要なはずです。俳優のように、力強く積極的な姿勢を取って下さい。「私は何が欲しいのだろう?」と自問するだけでは十分ではありません。「何のために戦っているのだろう?」と問いかけて下さい。
何かのために戦う時、人はすべてのエネルギーをつぎ込みます。売り込みが成功することで得られる数多くのメリットについて考えて下さい。そのメリットを常に心の中の一番高いところに掲げて下さい。契約が成立した時に得られる特別な機会を楽しみにし、それに向けて自分を燃え上がらせて下さい。
俳優は、セリフと動きが書かれた台本を必要とします。そして、優秀な俳優は簡単そうに演じます。彼らは「台本読み込み」テクニックを使い、言葉に命を吹き込みます。営業マンもまた、営業の台本を使います。
しかし、台本をありがたいものだと思うことはほとんどありません。なぜなら、ほとんどの営業台本はシェークスピアやマメットの作品の台本のようだからです。つまり、残念なことに、時代遅れだったり、つまらなかったりする場合がほとんどなのです。
営業台本をただ丸暗記してはいけません。セリフの内容を理解して下さい。俳優のように台本を評価して下さい。営業台本が伝えようとしていることは何ですか? 俳優は「役のスコアリング(役の分析)」と呼ばれるテクニックを使って台本を深く理解します。そして、それぞれのセリフの裏にある意味を理解しようとします。また、役者の多くが、演じる役柄の行動やセリフを自分達の生活と結び付けます。同じことを営業台本でも行って下さい。
登場人物が黒の靴を買うか茶色の靴を買うか2時間も迷う映画など、誰も見たくはありません。そこにドラマ性など無いからです。営業の見込み客も含むすべての人が、ドラマが好きです。見込み客は、自分達を楽しませてくれる営業プレゼンテーションを期待しています。売り込みの中に5つのドラマ要素を探して下さい。
5つのドラマ要素とは、興味、不確実性、感情、争い、そしてアクションです。また、見込み客がどこで切迫感を覚えるか見極め、それに沿ってプレゼンテーションを調節して下さい。自尊心、プライド、野心、安全性、人間関係など、見込み客の感情に訴えるポイントを押さえて下さい。
俳優は、相手役と関わり合う必要があります。つまり、一緒に演じる他の俳優と親しい関係を築かなければなりません。同じように、営業マンも見込み客と良い関係を作らなければなりません。営業マンの中には、マッチング6やミラーリングなどの神経言語プログラミングテクニックを使う人がいます。しかし、これらのテクニックは本物ではない、模倣されたテクニックです。
そうではなく、ロシア人の演出家、コンスタンチン・スタニスラフスキー7が考えた「魔法のもし」を使って下さい。「魔法のもし」とは、演じる役の考えや感情、精神的プレッシャーなどを自分に重ね合わせることで、その役柄に感情移入するテクニックです。
例えば、「もし、私が、40歳の独身女性で、競争の激しい市場でもうけを出し続けるのに苦労しているファミリー企業に勤めているとしたら?」と自分に問いかけて下さい。このような状況は自分にどのような影響を与えると思いますか?このように見込み客の立場になって考え、それに沿って適切にプレゼンテーションを調節して下さい。
役を演じるにあたって、緊張をほぐすだけではダメです。その役になりきるために自分のテンションをあげねばなりません。 そのために、ここでは、ゴールを明確にすると言及しています。つまり、営業として売上を上げるというゴールを明確に心の中に持つことです。
それを達成するためにも、台本に書かれたことを覚えるだけでなく、理解し感情を吹き込むというテクニックを使えるようにしなければなりません。いわゆる演技です。それについては、次項に書かれていますので、読み進めていきましょう。
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