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リーダーの人間性に求められるものヘッドハンターから見たリアルリーダーとは? (2/2 ページ)

リーダーとして長期的に成功し続けていくためには、何が必要か? 米国の億万長者が成功要因として最も多く挙げたのは「誰に対しても誠実である」だった。

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「誠実さ」と「従順さ」「素直さ」は違う

 ただし、気を付けないといけない点は「誠実さ」と「従順さ」「素直さ」は別の意味だということです。

 日本人は決められたルールに対して適応性も順応性も高いといわれています。地道に努力を重ね、最終的に成果が出るまでやり続けることができるまじめさ、勤勉さを持っています。しかしながら、今は社会やビジネスのルールが大きく変わっていく時代です。ルールそのものを変えられしまうと、また一からのやり直し。それでも気を取り直して、一から改善を繰り返し、成果を出すとまたルールを変更されてしまうということが繰り返されていませんか?

 こういう状況下では、政治力も時には必要だとつくづく感じることが多くなってきました。今の「リアルリーダー」に必要なことは、場合によってはルールを作る側にならなければ根本的な変革はできない。それに気付くことだと考えています。あるいは、ルールに対して常に疑いの目を向け、時代に合っているのかどうか吟味し、必要に応じてルールそのものを変えていく勇気も必要なのではないでしょうか。

 「誠実さ」という言葉を浮かべたときに思い出す人物がいます。

 わたしの十数年来の親友であり、生命保険業界で10年以上もトップを取り続けるほどパワフルで頭の回転も速く、会った瞬間に人を魅了する素敵な女性です。正義感も強く、理不尽なことや間違ったことに対しては正々堂々と真正面から意見を唱え、時にその内容は本質をつく鋭さがあるので、ときにハラハラドキドキさせられます。しかし、彼女のすべての言動には相手に対する気遣いと愛情があるので、トラブルになることもなく、周りからはとても愛されているのです。でも、それだけの理由でトップを取り続けているわけではありません。彼女は関わった人たちに対して心をこめて「誠実に」接しています。

 頼まれたことは可能な限りノーとは言わず、できることなら何でもやり、どうやったらできるのかも真剣に考え、自分に対する期待には精一杯応えるように行動します。誰よりも忙しいのに、東日本の震災後は何度もボランティアに出向いていました。引き受けたことはきちんと実行し、約束したことは守る。

 そして何よりも凄いのは、大切にしている人に対して「本当に思っていること」を自分の言葉で伝えます。時にそれが相手にとっては耳が痛いことであっても、言い難いことだとしても、彼女は勇気をもって相手に冷静に伝えます。決して自分の意見を押し付けることはせず、言葉にも配慮しながら、相手と向き合い、人間性を尊重しながら話をします。

 なぜなら誰よりもその人のことを思っているからです。だからこそ彼女に対する周囲の信頼は絶大なのです。単なるトップセールスの営業ウーマンとして認められているのではなく、真に「誠実である」という彼女の生き方そのものが評価されているのです。

 彼女も楽々と毎年トップを取り続けているわけではありません。時に数字的に厳しい年もありますが、そんな時は日頃彼女にお世話になっている人たちが勝手に応援団となり、本人以上に何とかしようと動き出し大きな波が起こってくるのです。調子の良い時だけの友人関係ではありません。苦しいときこそお互いに助け合っているのです。

 彼女や彼女の周りの人たちは、お互いに相手を思いやり、できることを助け合う気持ちの良い素敵な関係を築いており、それが好循環を生み出しているように感じられます。それこそまさに人間力、誠実さゆえの賜物なのでしょう。彼女の生き様は、なでしこジャパンの澤さんのように、自分の背中を見せて諦めずにやるべきことをきっちりとやっていけば、最後には奇跡さえ起きることを見せてくれます。

 もちろん彼女も人間ですので完璧ではありません。 時に怒りをうまくコントロールできないこともありますが、その生き様にうそはありません。 そして、彼女と良い関係でいるためにも自分自身を成長させていかないと……と思わせるリアルリーダーなのです。

 次回は、組織のステージに応じて求められるリアルリーダーの資質や特性は違ってくるので、組織に適したリーダーの探し方について話します。

著者プロフィール

石元聖子

大学卒業後、専門商社7年、外資系銀行2年、中堅アパレル会社2年とそれぞれの業界で貿易事務の仕事に従事した後、「人」をキーワードとし、独自のスタイルで仕事ができないかと模索していているときにヘッドハンターという仕事があることを知り、この業界に入る。

スタントチェイス・インターナショナル(業界内でトップ10に入るグループ)東京にてエグゼクティブ・パートナー(株主でもある共同経営者)として10年間勤めた後 2005年にラストラールを創設、代表取締役社長となり現在に至る。


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