車いすの視点で暮らしやすい社会を作るミライロの学生社長:日本の元気ダマ(3/3 ページ)
障がいは強みになる――先天性骨形成不全症で幼少時より車いす生活を送ってきた垣内さんはそう気が付いてから、ありがとうを言う側から言われる側になった。
垣内さんが立ちあげたミライロは、多様な視点から快適性や利便性の高い建物を考えることを事業としています。全盲のスタッフや車椅子で生活しているスタッフが多くの建物や施設を回り、バリアフリーやユニバーサルデザインの視点から、多くの方々が快適に利用できる設備環境を提案するのです。
街中には段差や階段など、お年寄りや障がい者が移動に不自由を感じる場所が多くあります。ベビーカーを押している親御さんも同様です。移動になんらかの不自由を覚える方は全人口の1/3にも及びます。
しかしバリアフリー関連の法律や自治体の条例は、利用者やその家族の快適性や利便性までは考慮していません。手すりが太すぎたり細すぎたりして使いづらいケースや、スロープに十分な幅がなく移動しにくいといったケースが多々あります。法律や条例を満たしているからバリアフリーは完ぺき、という簡単な話ではないのです。
日本は高齢化先進国です。その日本だからこそ、バリアフリーやユニバーサルデザインにおいて先進国であらなければならないと、垣内さんたちは考えています。
垣内さんの病は遺伝性で、将来結婚して子どもが生まれれば、垣内さん同様に足の不自由な体で生まれ、車いすの生活になる可能性が高いそうです。子どもが大きくなったとき、社会のバリアフリー化が進んでいたり働ける環境がたくさんあれば、障がい者はもっと社会で活躍できるのではないでしょうか。
まだ見ぬ我が子が、これからの障がい者が、そして社会全体がもっともっと良くなるように、垣内さんは1日1時間1分を大切にして仕事に取り組んでいます。
ミライロの元気のポイント!
- 障がいを強みに 自分たちにならではの価値を提供している。
- 使命感 障がい者や高齢者など、すべての人が生きやすい社会作りを目指している。
- 経済効果 バリアフリー化は経済効果も生み出す。
著者プロフィール:藤井正隆(ふじい まさたか) 1962年生まれ
イマージョン 代表取締役 MBA(経営学修士)、法政大学院 坂本光司研究室 特任研究員。ドリームゲートアドバイザー。
徹底的現場主義で年間100社以上の企業視察を踏まえた実践的な教育研修とコンサルティングを実施。農業にも問題意識を持ち、日本の農家(株)も立ち上げ精力的活動中。
専門分野:組織開発コンサルティング、マーケティング戦略と実行組織の最適化。
著書:「ぴょんぴょんウサギとのろのろカメの経営法則(経済界)」「感動する会社は、なぜ、すべてがうまく回っているのか?(マガジンハウス)」他、ビジネス雑誌に執筆多数。
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