『ひらいて』著者 綿矢りささん:話題の著者に聞いた“ベストセラーの原点”(2/3 ページ)
一人の女子高生の恋に焦点を当て、切実さとコミカルさが入り混じった物語世界を創り上げている。この作品で綿矢さんは何を試み、何を描こうとしたのだろうか。
「自殺」から書き直された結末
―― 一番執筆がはかどった箇所はどんな場面でしたか?
綿矢:「やっぱり、気持ちの描写のところかな。“相手を好き”っていう気持ちとか、心象風景のところとかはすごく書きやすかったです」
――綿矢さんが得意とされているところですね。
綿矢:「得意というか、そういうのを書くのが好きっていうのはありますね。だから割とスラスラ書けるんですけど、それを物語に入れ込むのがめっちゃ難しいです。 今まではそういう描写は冒頭とかプロローグみたいな箇所にしか入れられなかったんですけど、これからはもっと入れていきたいですね」
――反対に、物語を進めていくような描写は、どちらかというと苦手なんですか?
綿矢:「はい、本当にそれが苦手なんです。お話を展開させていくことを意識的にできなくて、勝手に転がっていかないと話が終わらない。だから途中で止まってしまうこともあるし、未完成のままっていう話も多いです。筋運びとか、人と人との関係の能動的な動きっていうのが掴みづらいんですよ」
――物語の締めくくり方の上手さはデビュー時から言われていましたけど、この作品も結びがすばらしいですね。
綿矢:「いつも書き終えるときは“これで終わった!”って思うんですけど、読んでくださった方に“これから始まると思ったところで終わる”ってよく書かれるから、最近は“いかにも終わり”っていう結び方を目指してます」
――今回の終わり方はいかがでしたか?
綿矢:「今回もすっきりと“終わった!”って感じでしたね。これでもまだ終わってへんと思う人がいるかもわからないですけど(笑)。自分では“終わった!”と思ってます」
――もっと物語としてわかりやすい結末を考えようと思えばできたと思うんですけど、あえてそれをせず、ちょうどいいところで手放しているように思いました。
綿矢:「ありがとうございます。最初は主人公を自殺させるっていうことも考えたんですけど、編集の方に見せたら“死んで終わるのは違うのでは?”と言われて、そうやな、と思って書き直しました」
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