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オリンピックの魔物を払いのけてメダルをつかんだ選手たち小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(2/2 ページ)

史上最多のメダルを獲得したロンドンオリンピックの日本選手団。大会中、選手たちの身近にいて、改めて彼らはただ者ではないと実感しました。

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ありのままを受け入れ、ベストを尽くす

 女子レスリングの伊調馨選手のオリンピック3連覇も強く印象に残りました。

 伊調選手は万全な体調ではありませんでした。ロンドンに入ってからすぐ、練習中に捻挫をしてしまったのです。試合までそれほど時間はありませんから、よく考えたら大変なことです。しかし、本人はもちろん、コーチや周りのスタッフも誰も大騒ぎもせず、平然と構えているのです。愚痴も言わず、もちろん誰かのせいにすることもありません。

 試合中も相当痛かっただろうと思います。我々メディカルスタッフもやるべきことはすべてやって、騒がず、見守りました。怪我しているようなそぶりも見せない戦いぶりで、彼女は見事に金メダルを獲得しました。

 起きてしまったことを受け入れて、動じず、その状態でいかに戦うかだけを考える。できそうでなかなかできないことです。トップアスリートたちは自分でコントロールできることと、できないことの区別が明確です。起きてしまって自分でコントロールできないことは振り返らず、その状態でベストを尽くすことにだけ、前を向いて集中することができるのです。

 予期せぬさまざまなことが起こりうるオリンピックという大舞台。今回のロンドンオリンピックでも、魔物やアクシデントを払いのけて勝利をつかみ取る、そんな偉大な選手たちをたくさん目の当たりにすることができました。

 どんな場面においても、受け入れて、動じることなく、迷うことなく、力を発揮することができるオリンピック選手たち。我々が生きていく上で、参考になる、勉強になることばかりです。

 これからも、そんな一流選手たちのすばらしさを伝えていきたいと思います。


著者プロフィール

小松裕(こまつ ゆたか)

国立スポーツ科学センター医学研究部 副主任研究員、医学博士

1961年長野県生まれ。1986年に信州大学医学部卒業後、日本赤十字社医療センター内科研修医、東京大学第二内科医員、東京大学消化器内科 文部科学教官助手などを経て、2005年から現職。専門分野はスポーツ医学、アンチ・ドーピング、スポーツ行政。

オリンピック選手にまつわるエピソードが盛りだくさんの新刊『いつも「本番に強い人」の心と体の習慣』(日本文芸社)も好評発売中。



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