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「出現する未来」を実現する7つのステップ――プレゼンシング:Presensing(前編)U理論が導くイノベーションへの道(2/2 ページ)

過去の延長線にはない「その時、歴史が動いた」と感じるできごとを体験したことがあるだろうか。それがターニングポイントとなることがある。

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プレゼンシングへの入り口はどこに?

 プレゼンシングがどんなものであるのか解説が非常に難しいのは、それを体験している本人が言葉では形容しがたい体験であるのとともに、プレゼンシングは浅いものから、非常に深いものまで、さまざまなレベルがあるからです。

ただ、少なくともいえることは、ダウンローディング、観る(Seeing)、感じ取る(Sensing)までが個人の内側の体験に留まるのに対して、プレゼンシングは個人という枠を超えて、まるで共鳴するかのように、程度の差はあれ他の人を響かせるものがあります。

 また、プレゼンシングの後は、過去の延長線にはない展開を迎えることが多く、まるで「その時、歴史が動いた」と言っても過言ではないかのようなターニングポイントとなることも少なくありません。

 先ほどした伏見工業のエピソードは、約40年前の話にも関わらず、胸に迫るものがあり、涙が滲んだ人もいるのではないでしょうか。また、押しても引いても練習をしなかった部員達が、まるで人が変わったように練習をし花園高校に打ち勝ったという結果は、奇跡としか表現しようがありません。この過去の延長線ではない全く新しい可能性の未来を迎える起点となる瞬間を、オットー博士は「未来が出現する」と表現しています。

 このエピソードほど、劇的なケースばかりではありませんが、例えば浅いレベルであったとしても、会議中にプレゼンシングが生じたとしたら、話し合いが新たな局面を迎えたり、もう一段ぐっと深まったりして、会議の参加者全員中で「そう、これだよね!」と深い確信に満ちた結論が生まれることはよくみかけます。

 こういう展開は、決して派手ではありませんが、少しずつ積み重なっていくことで、社長がダウンローディング的にトップダウンで指示を下した場合と比べて、面従腹背にならず、一人ひとりが主体性を発揮し始めるという静かで確実な変容へと繋がっていきます。そうした状態がプレゼンシングだとして、その状態へと移行する入り口は、一体何なのでしょうか?

 この点を探るために今一度、伏見工業のエピソードを振り返ってみましょう。

山口さんの監督としての拡大、いうなれば、リーダーとしての拡大は、Uプロセスにそのまま当てはまるように思われます。

(1)ダウンローディング:俺の言うことを聞かなかったお前達が悪い

「俺は、全日本の選手やったんや! 俺は、監督や! 俺は、教師や!」「俺の言うことを聞かないから、ぶざまな試合になるんだ!」

(2)観る(Seeing):予想を上回る点差に釘付け

0点のまま、花園学園にどんどん点数を取られていく様子と対時する。

(3)感じ取る(Sensing):矢印が自分に向き、開かれた心にアクセスする

「無茶苦茶やられて悔しいやろうな。歯がゆいやろうな。情けない想いをしているやろうな。俺は今までこいつらに、何をしてやったんや!」「本当にすまん」

(4)プレゼンシング:皆が泣き崩れ、一体感に包まれ開かれた意志にアクセスする

山口さんに最も抵抗していた生徒が「悔しい!」と叫び、泣き崩れ、それにつられて、次々とみんな泣き崩れる。

 こうして並べてみてみると、確かにUの谷を潜っているように見えますが、肝心のプレゼンシングへの入り口は、一体何だったのでしょうか?U理論の中では、その入り口となるものを「手放す(Letting Go)」と呼んでいます。

著者プロフィール

中土井 僚

オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。

社団法人プレゼンシングインスティテュートコミュニティジャパン理事。書籍「U理論」の翻訳者であり、日本での第一人者でもある。「関係性から未来は生まれる」をテーマに、関係性危機を機会として集団内省を促し、組織の進化と事業転換を支援する事業を行っている。アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア株式会社)他2社を通じてビジネスプロセスリエンジニアリング、組織変革、人材開発領域におけるコンサルティング事業に携わり2005年に独立。約10年に渡り3000時間以上のパーソナル・ライフ・コーチ、ワークショップリーダーとしての活動を行うとともに、一部上場企業を中心にU理論をベースにしたエグゼクティブ・コーチング、組織変革実績を持つ。


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