育成というけれど、いったい何をするべきなのか:社員が自律的に成長し続ける組織の創り方(2/2 ページ)
メンバーが自律的に成長し続ける組織を望んでいるマネジャーは多いだろう。手取り足取り指示を出すのではなく自ら考える挑戦機会を提供し、学ぶ。成長のサイクルを回し続ける方法とは。
4つの支援から現状の職場を直視する
では、皆さんの職場のメンバーは、以下のようなことはないだろうか?
- 多くの失敗をして萎縮したり、成果がなかなか出ずに疲弊したりしている
- 失敗した時などに気持ちが折れやすく、モチベーションが下がりやすくなる
- ポテンシャルが高いと思っていた若手が挑戦せず、あまり成長していない
- 自分で考えずに仕事をこなし始め、伸び悩んでいる
それぞれがなぜ起こるのか。それは職場での何らかの支援が足りないからである。弊社では、前述の目指す2つの育成に対して、4つの支援という観点で、100部署以上の職場を調査・分析をしている。以下にその4つの支援をまとめたので、自分の職場に該当しないかどうかを振り返ってほしい。
「組織への順応をうながす育成」としては、風土に慣れ、具体的に仕事を進めるようになるために、特に以下の2つの支援が重要になってくる。
(1)アドバイス支援:
業務のやり方を教える技術的な支援。仕事の意味を伝えたり、リスクやスケジュールをチェックしたり、過去の経験を話すなど、仕事を前に進める上で必要な支援だ。
→アドバイス支援が少ないと、メンバーが多くの失敗をして萎縮したり、成果がなかなか出ずに疲弊したりしている可能性がある。
(2)ハゲマシ支援:
近くで寄り添い、やる気を支えたりする精神的な支援。行動を気にかけ、声をかけ、相談しやすい環境を作りしっかりと話を聞く。互いに信頼関係を構築するような支援だ。
→ハゲマシ支援が少ないと、メンバーが失敗した時などに気持ちが折れやすく、モチベーションが下がりやすくなる可能性がある。
そして、「自律的に考え、成長できる人材に育てる育成」としては、新たな経験の中で自ら考え持論化をしていくために、(1)(2)に加えて、特に以下2つの支援が重要になってくる。
(3)ストレッチ支援:
本人にとってチャレンジとなる挑戦機会を提供する支援。成長の魅力を伝え、新しい機会を提供し、自信を持たせて、後押しをする。メンバーの力を引き出すような支援だ。
→ストレッチ支援が少ないと、ポテンシャルが高いと思っていた若手が、挑戦せず、あまり成長していないということが起こる可能性がある。
(4)キヅキ支援:
経験をもとに自らの頭で考えて持論化を促す支援。日々の行動を観察し、面談などの機会を設け、学んだことに気づかせるように問いかける。自ら考えさせるような支援だ。
→キヅキ支援が少ないと、メンバー自身で考えずに仕事をこなし始め、伸び悩んでいる可能性がある。
自分の職場はどのような支援が多く、どのような支援が少ないのかを確認してほしい。
現状を直視し、具体的な行動を明らかにする
育成というけれど、いったい何をするべきなのか。
まずは、現状の職場やメンバーの状況を可視化し、どのような人を育て、どういう風土にしていきたいかを決める。その際、「組織への順応をうながす育成」「自律的に考え、成長できる人材に育てる育成」のそれぞれを意識する。
その上で、やるべき具体的な支援を明らかにしていく。前述の4つの支援を重視し、特に必要な支援は何かを明らかにする。育成という曖昧な言葉でとどめるのではなく、具体的な支援のレベルで語り、進めることが大切である。
例えば、「自職場の状況を踏まえた上で、より自律的な人材を増やすためには、キヅキ支援を強化し、特に学んだことを考えさせる機会を増やす」「仕事に慣れるだけでなく、挑戦する人材を育てるために、挑戦する機会の提供と自信を持たせて後押しをすることを重視する」というように具体的な行動を明らかにすることが大事なのだ。
自分の職場を見たときに、どのような方向性を目指し、具体的にどのような支援を重視するのかが明らかになっているのかどうかを振り返ってほしい。
次回以降、100部署以上の職場の実態のデータをもとに、他の職場ではどのような具体的な行動がメンバーの成長やモチベーションに対して影響を及ぼしていくのかを述べていく。その中で次回は、職場にただ慣れさせるだけでなく、イマドキの若手を後押しする方法を中心にまとめていきたい。
著者プロフィール
上林 周平
株式会社シェイク 取締役
大阪大学人間科学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。主に業務変革などのコンサルティング業務に携わる。2002年シェイク入社。各種コンサルティング業務と並行し、人材育成事業の立ち上げに従事。その後、商品開発責任者として、新入社員から若手・中堅層、管理職層までの各種育成プログラムを開発。また、2004年からはファシリテーターとして登壇し、新入社員から若手・中堅層、管理職層まで育成に携わった人数は1万人を超える。2011年9月より取締役就任。
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