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ユーザーからのリクエストが集まる情報システム部門へ「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記(2/2 ページ)

1960年の会社設立以来、アミューズメントマシンメーカーとして事業を拡大し、1983年からは家庭用ゲーム機市場へも参入したセガ。テクノロジーを使ったゲームの開発を事業の中核とするセガにとっての情報システム部門のあり方とは。

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 ――情報システム部に異動してからは? どのように会社に貢献したのか。

 AM事業のシステムの運用をITサービスチームに移管し、開発チームは情報システム部の開発チームに統合して、私自身はIT企画チームを立ち上げ課長になった。当時、ITガバナンスを推進していたが、あまり活動していなかったのでまずはそこからスタートした。その後、2010年4月に副部長に、2011年1月に現職である部長になった。


セガの草島氏(右)、ガートナーの重富氏

 IT企画チームを立ち上げもそうだが、これまで割と「かってに」何かを始めることが多かった。それを許してくれる企業文化がセガにはあった。また周りの人に恵まれていた。もちろん意思が通じない人もいたが、伝える努力をすることでコミュニケーションできるようになる。ストレスはあるが、ものごとを必要以上に深く考えないのが強みである。

 IT基盤はセガという会社にとって不可欠なインフラだが、それがない時代にセガに入社して、AM施設事業のIT基盤を作ったことが会社に対する貢献といえる。最初に作ったAM施設の店舗管理システムは5年の運用にとどまったが、2001年にリリースしたAM施設の店舗管理システムは、10年以上を経た現在も稼働している。リリースから10年以上利用できるシステムを構築できたことはよかったと思っている。

 ――仕事を通じて学んだことは。

 店舗管理システムを構築する前に、空いている時間を見つけて簿記の勉強をして、資格を取得した。その後、偶然にも会計システムの構築が始まった。また英語が話せるといいなと思い、英会話教室に通って日常会話ができるようになったとたん、グローバル化の必要性から海外での仕事も増えた。

 直接は仕事に関係ない勉強でも、後の仕事につながることがあるので思い立ったらチャレンジするべき、ということを学んだ。また、巡り合わせというものを感じている。ゲームを作る会社なので、新しい発想をつぶすことなく育てようという企業文化があるため、やりたいことをやらせてもらえたのかもしれない。

 女性だから得したこと、損したことはあるかもしれないが、本人はまったく気がついていない。10年間、女子だけの学校で、男女差を意識せずに育ってきたためだが、私が特別というわけでもない。「ダイバーシティ」という言葉を意識しなくてもよいのがセガの社風でもある。

 私自身は、情報システム部門はいろいろな人とコミュニケーションができ、常に新しい発見があるので、楽しい部門だと思っている。しかし、プログラミングは楽しいが、ユーザー部門とのコミュニケーションは苦手という技術者もいる。

 社内が楽しくなければ、お客さまに楽しんでもらう発想は生まれない。だから、こうした状況は変えていかなければならない。ユーザーの要望をすべてシステム化しようとするから辛くなる。そこで今後の情報システム部門には、何が必要で、何が不要かを、ユーザーとしっかりコミュニケーションできる能力が求められる。

 情報システム部門は、管理監督部署のような堅い雰囲気ではなく、ユーザー部門が「このツールを使いたいのだけど」と相談してくれる、情報の集まる場所にしたい。みんなからリクエストが集まる部門にならなければならないし、メンバーも肩に力を入れず楽しくハッピーになれる部門にしたいと考えている。

対談を終えて

 組織活力の源泉は、男女の問題だけではないが、「ダイバーシティ」にあり、ITの職場はその実現には格好の場であると私は考えている。そのような訳で、今回はその辺りを女性部長である草島氏に伺えるのではと期待しインタビューを行った。

 結果は見事に裏切られた。そんなことは、ご本人も会社も全くと言ってよいほど気にしていないのだ。インタビューにも再三登場するが、「自分がやるべきことを、自分が率先・提案して行動に移すだけ。それを会社が認め、任せてくれた」とサラリと言われてしまった。考えてみれば、本来のダイバーシティとは、そのことを意識しないで実現することなのだから発言は当然なのかもしれない。率直で爽やかなインタビューであった。

プロフィール

重富 俊二 (Shunji Shigetomi)

ガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム バイス プレジデント エグゼクティブ パートナー

2011年 12月ガートナー ジャパン入社。CIO、IT責任者向けメンバーシップ事業「エグゼクティブ プログラム(EXP)」の統括責任者を務める。EXPでは、CIOがより効果的に情報システム部門を統率し、戦略的にITを活用するための情報提供、アドバイスやCIO同士での交流の場を提供している。

ガートナー ジャパン入社以前は、1978年 藤沢薬品工業入社。同社にて、経理部、経営企画部等を経て、2003年にIT企画部長。2005年アステラス製薬発足時にはシステム統合を統括し、情報システム本部・企画部長。2007年 組織改変により社長直轄組織であるコーポレートIT部長に就任した。

早稲田大学工学修士(経営工学)卒業


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