カカクコムの徹底した「ユーザー本位」、その鍵は情熱ある“オタク社員”にあった:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/4 ページ)
価格比較サイトの先駆けとして90年代末に登場した「価格.com」は、いまや月間8億7000万ページビューという巨大サービスに成長した。その成長の裏側には一体何があったのだろうか。カカクコム・田中社長が語った。
マスの力で“やらせ”を排除
菅野 メディアにとって情報の質の維持は極めて重要です。しかし、最近ではやらせの書き込みが問題となっています。
田中 その対処のアプローチの1つ目は、テクノロジーを利用した検出、2つ目は人手による選別です。
実のところ、やらせの書き込みはメーカー名や商品名こそ変えてあるものの文面の大半は定型です。また、同一のIPアドレスから何十人もの書き込みがあるのも明らかに疑わしい。当社はそれらを特定するテクノロジーで対応しています。ただし、やらせの書き込みの完璧な排除は現実には不可能です。そこで切り札となるのが、3つ目のマスによる浄化、つまり、多くのユーザーに書き込んでもらうことで、少数の書き込みによる影響をできる限り抑えるわけです。
菅野 企業の競争優位性は、他社が容易に真似できない部分から生まれます。話を聞いてみると、確かに価格.com事業の模倣は簡単ではなさそうです。
田中 私が入社した2002年当時、オフィスには、引退した創業者、槙野光昭氏の寝袋が残されていました。在職中、彼はいつもオフィスに寝泊まりしながら徹夜でサービスを考えたのでしょう。ユーザーのためになる“何か”の模索に情熱を持って取り組んでいたわけです。本当にサステナブルな事業とは、創業者が一人、孤独に考え抜いた末に生まれることが多いのではないでしょうか。
利用者のポートフォリオ改善が新たな成長の鍵に
菅野 カカクコムでは今後、長期的には何に成長の機会を求めようと考えているのでしょうか。
田中 カカクコムは全社に現場主義が根付いています。今後も、現実を見て課題をつぶすという従来からのやり方は変わらないはずです。ただ、現状で抱えている課題もいくつかあります。その1つが、コアの利用者が30〜50歳で可処分所得が高い男性層であるために、結果的に若者やシニア、女性に対して我々のサービスが浸透していないことです。この利用者ポートフォリオを世間一般と合致するよう修正し、新サービスに呼び込むことが次の成長の“肝”と言えるでしょう。
そこで手本となるのがリクルートとベネッセです。まずリクルートは、創業者である江副浩正さんの卓越した目利き力で新市場を発掘し、紙媒体での情報提供によって業容を拡大させてきました。同じ情報提供を生業とする当社としても、彼らの新市場を発掘するやり方は見習うべきところがあると思います。
一方ベネッセは、小中高生向けの通信教育講座「進研ゼミ」を皮切りに、「こどもちゃれんじ」などの乳幼児向け教材から高齢者向けの介護サービスまで事業を拡大することで、いわば、人生のすべてのフェーズをカバーするサービスを実現しています。
これらの先例を参考に、ポートフォリオを適正化し、ジャンル別や年代別に確実に成果を上げられるサービスを地道にやり続ける。これが、当社が次の成長軌道を描くためになすべきことでしょう。
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