ほめるな、叱るな、教えるな:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
部下育成の定石が「ほめて、叱って、教える」だったことに比べれば、まさに「非・常識」。しかし、これはアドラー心理学の考え方そのものである。
では「教えない」とはどういうことでしょうか? アドラー心理学では、求められてもいないのに口出しをすることを世話焼きと呼び、いましめています。もしも相手が「手伝ってほしい」「教えてほしい」と求めてきたら、手を貸すのは構いません。
しかし、相手が自分の力でやり遂げようとチャレンジしているのに、頼まれてもいないのに助言や手を貸すのは、要らぬおせっかい、というものです。こちらから手出し、口出しをせずに、暖かく見守る姿勢こそが必要なのではないでしょうか?
アドラー心理学では世話焼きには隠された目的がある、と考えます。それは「自分がいないと相手が何もできない」と思うことで自己の存在意義を高めようとする、ということです。さらに、世話焼きは相手を信頼していない証拠である、と考えます。
もしも、相手を信頼しているとしたら「きっとできる」と思い、口出しをしなくなるはずです。しかし、求められてもいないのに口を出す、ということは「どうせできっこないだろう」と相手を信頼していない証拠になるのではないでしょうか。
では、アドラー心理学が提唱する「ほめるな、叱るな、教えるな」。この理論に沿うならば、何も言わずに放ったらかしにすればいいのでしょうか? いえ、そうではありません。
教えるのではなく、支援応需(相手から求められたら支援する)の姿勢で見守るのです。ほめるのではなく勇気づける(横から目線で共感的に言葉をかける)のです。叱るのではなく、親しみのある話し合いをするのです。
本書では、これらのコミュニケーションにつき、具体的なスキルとともに解説してまいります。今、注目されているアドラー心理学を応用して、自立・自律的な部下育成をしたいと考えるすべての上司の皆さんにお読みいただきたい書籍です。なお、11月末発売にて本書の続編である「アドラーに学ぶ職場コミュニケーションの心理学」(日経BP社)も発売されます。ぜひあわせてお手にとってご覧になってください。皆さんの組織づくりに少しでもお役に立てれば幸いです。
著者プロフィール:小倉広
ビジネス書作家、講演家、アドラー派の心理カウンセラー
株式会社小倉寛事務所代表取締役。一般社団法人人間塾代表理事、一般社団法人日本コンセンサスビルディング協会代表理事。
大学卒業後、株式会社リクルート入社。事業企画室、編集部、組織人事コンサルティング室課長など主に企画畑で11年半を過ごす。その後ソースネクスト株式会社(現東証一部上場)常務取締役、コンサルティング会社代表取締役などを経て現職。ベストセラーとなった『33歳からのルール』や『任せる技術』等の著作を通じて、「悩める30代」のメンター、若手リーダーの悩みに答えるリーダーシップの専門家として知られている。 近年は、アドラー心理学と企業組織の双方を熟知した数少ない専門家として、講演、企業研修を数多く行っている。
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