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「間違いだらけのビジネス戦略」が読み解く2015年のビジネス・シーンビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

家電小売りのガリバー ヤマダ電機が、昨年までの不調から一転して好調な業績になった理由はどこにあるか。それは、経営戦略の転換である。

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戦略の有無が企業の命運を決めている

 今年、他にも印象に残ったビジネス・シーンを幾つか想起してみよう。

 マグドナルドホールディングス社では、業績が昨年から絶不調だ。対比的に業界No.2のモスフードサービスは好調だなどと報じられているが、そんなことはない。2015年3月期営業利益は、前年比27.9%減の15億5400万円だった。売上高は663億1000万円と前期比1.5%の微増、経常利益は15億2300万円(同35.9%減)となった。マックがこの2年間で724億円落とした年商の半分、362億円でもモスが取り込めていれば、その売上高は50%以上も伸張できた。そもそもこの会社は1998年に国内1500店を達成して以来、ほとんど店数を伸ばしていない「不動の」業界2位だ。

 花王はB-to-Cの分野で日本を代表する優良会社である。しかし、その内向き志向は度し難い。10年前、2005年の海外売上比率は、花王は26%、米国プロクターアンドギャンブルは32%と大差なかった。ところが直近で花王のそれは29%と伸びていないのにP&Gは61%としている。P&Gがこの間北米以外で伸ばした売上金額は実に6兆円を超している。花王はみすみす世界市場を明け渡してしまった。十分な経営資源を有していたのに!

 任天堂がスマホゲームに参入できないのは、「イノベーションのジレンマ」によるものだ、と私が指摘したら、岩田聡社長はそれに抗するかのようにデーエヌエー社との提携を発表した。しかし、社長が急逝された後、その戦略は貫徹されるのだろうか。企業組織には強固な「価値基準」が組み込まれてしまっているからである。

 総合スーパーの時代が終わってしまっていることは明らかだ。だとしたら、セブン&アイHDの鈴木敏文会長の仕事は、イトーヨーカ堂を売却することだろう。それが鈴木会長にとっての「最後のご奉公」になる。

 新浪剛史氏がサントリーHD社長に転出するまでに、4年間の周到な準備期間があった。サントリー佐治信忠会長は、2010年キリンとの経営統合が破綻したときに新浪氏獲得に動いたと私は見ている。新浪氏が玉塚元一氏をローソン社長に就任させた時点で、私は新浪氏のローソンからの転出を予言した。それにしてもこの5年間、キリン側の業績暗転はひどかった。果断なオーナー経営者との覚悟の差異と組織構造が原因だ。

2015年のビジネス・シーンを戦略で読み解く

 上記にあげた他、トヨタ、ソニー、スカイマーク、大塚家具、スタバ、ヨドバシカメラなど、誰もが知る著名企業48社を取り上げて、それぞれの経営戦略の巧拙を評論・解説したのが、拙著「間違いだらけのビジネス戦略」(クロスメディア・パブリッシング社)である。今週発刊されたばかりだ。

 連載途中から結構な反響があり、とりあげた企業の幹部の方から反論のメールを頂いたりした。また私自身の経歴から「プロ経営者の時代」に興味があり、サントリー、ベネッセ、LIXIL、武田薬品の経営者の方々の仕事ぶりも評価させて貰った。

 20世紀における東西ベスト経営者は、故・松下幸之助とジャック・ウェルチだとしたが、今世紀では誰か。また、今年のワースト経営者は誰だったろうか。そんなことも書いた。

 2015年のビジネス・シーンを私という「固定視座」から一緒に覗いて見て欲しい。私の固定視座とは「戦略的視点」なので、戦略的視点を共有して貰えれば、読者の皆さんのビジネス展開にきっと寄与するだろう。

著者プロフィール:山田修(やまだ おさむ)

ビジネス評論家

フィリップス・ライティング社では、3年間で半減していた年商を3年で3倍増し、6年間赤字だったミード社では就任半期で黒字化するなど、「再生経営者」と呼ばれた。外資4社及び日系2社で社長。

学習院大・修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)満了。国際戦略経営研究学会員。

『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)他、アマゾンベストセラー総合1位3冊を含む著書多数。テレビ出演も多い。


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