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【新連載】人生に関わる疾病から命を守るには知っておきたい医療のこと(2/2 ページ)

がん、脳梗塞、心筋梗塞そして認知症。尊厳を奪い人生を台無しにし得る疾患から自分を守るためにはどうすればよいのか。

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 次いで、医療を取り巻く環境について触れます。例えば製薬会社や医療機器メーカーは、医療を発展させてきた功績は大きい一方で、営利事業体として自らに有利な情報を強調せざるを得ない事情を有します。医学論文は、その作成において真理の追究が使命ですが、利益相反の影響を受けることが無いとは言えません。直接国民に影響する保険制度や健診システムなどに関わる医療行政は、法整備の不備や財政面、人材面での限界などが改善できず、最新の医療技術が速やかに臨床で応用されにくい環境を作っています。

 このような中でわれわれ医師は何を信頼して医療に取り組むべきなのでしょうか。何に基づいて皆さまに有効な医療情報を提供すれば良いのでしょうか。日進月歩に進化する医療技術を評価し実践する場合に前述のさまざまなバイアスが避けられません。

 これを適切に運用するには、現時点で最も信頼できる医療情報の見極めが極めて重要になります。その意味で、われわれが医学的判断をする上で最重視している姿勢は、「真摯に医学・医療に取り組む専門集団の信頼に足る研究や議論の中から生まれた報告を蓋然性が高いものと捉え、それらを自らの臨床、研究経験に照らした上で初めて真理と判断し得る情報に基づくこと」です。

 くどい言い回しとなってしまいましたが、要は、「われわれ医師が心から信頼できる真面目な研究医や臨床医達の医学研究から得られた科学的事実を、自ら現場で実証して初めて正しい医療真理と認識する」、ということです。

 皆さまが、医療情報を入手する際には、(1)現代医療は目まぐるしい進化を続けている (2)医学的真理の追究は実際容易ではない(絶対正しいと言える医療情報は少ない) (3)医師が医療判断をする上でさまざまなバイアスがある、という事情を理解して、誤った判断をしないようにするのが理想です。

 最後に改めて、国民病たる致死的疾患「がん」、高齢化社会で急増する「認知症」、突然重症化し得る「脳梗塞・心筋梗塞」、これら皆さまの尊厳を奪い人生を台無しにし得る疾患から自分を守るためには、どうすればよいのでしょうか。それぞれの疾患の概要や発生要因についても事前に理解しておくべきでしょう。どのような原因でどのように疾患が発症するのか、世の中への影響は、予防するために日常気を付けるべきことは、信頼できる医療機関をいかに選び利用していくのか、などについて今後の連載で整理していきます。

著者プロフィール:北青山Dクリニック 院長 阿保 義久

1965年、青森県生まれ。東京大学医学部卒業後、東京大学医学部付属病院第一外科勤務。その後、虎の門病院で麻酔科として200例以上のメジャー手術の麻酔を担当。94年より三楽病院で胃ガン、大腸ガン、乳ガン、腹部大動脈瘤など、消化器・血管外科医として必要な手術の全てを豊富に経験した。97年より東京大学医学部第一外科(腫瘍外科・血管外科)に戻り、大学病院の臨床・研究スタッフとして後輩達を指導。

2000年に北青山Dクリニックを設立。下肢静脈瘤の日帰り手術他、外科医としてのスキルを生かした質の高い医療サービスの提供に励んでいる。


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