【新連載】部下のメンタル不調サインに気付けるか:管理職が学ぶべきメンタルヘルス・マネジメント(2/2 ページ)
「うちは大丈夫だろう」から「いつ起きてもおかしくない」に管理者は考えを改める必要がある。
繰り返しになりますが、ポイントは、兆候が見えてからコミュニケーションをとるのではなく、普段から表情を見ておくことです。そしてこうしたサインに気づくには、常にコミュニケーションをとり何かあったら相談しやすい関係を築いておくことが重要です。
ストレスは、業務量や質、人間関係などが原因の場合が多いですが、そのまま質問しても「大丈夫です」「特に問題ありません」という答えしか返ってこない場合もあります。
また、何らかのサインが見えたとしても「何かあった?」という質問は、問いかけられた方も答えにくいので、気になる部下がいたら「最近しっかり眠れてる?疲れはとれてる?」など答えやすい質問が効果的です。いずれにしても無理に聞きだすというよりも、「気にしているよ」ということやいつでも話を聞く気持ちがあることを伝えるのが大切です。
丁寧に話を聞き、業務量の調整など解決できることがあれば早急に対応しましょう。一方、体調面の不調が目立ち、就業後や休日も体調が悪く、ストレスや問題を一人で抱え込んでいる様子が見えたら産業医や人事など、社員の体調管理をしている部門につなげてみましょう。
3、ストレスサインを見つけたときの対処法
では、部下との会話や普段の様子からストレスサインが見えた場合はどうすればいいでしょうか。
まずは、対象の部下とコミュニケーションをとり、ストレスを感じているポイントやストレスの度合いを把握することです。なお、この際に気を付けてほしいのは、話を聞き理解することに徹し、決して意見を述べたり、諭したり、叱咤激励はしないことです。最もやってはいけないことは、相手を「否定」することです。
相手の話が業務上、社会通念上、間違っていてもその場では意見を伝えたり、諭したりすることは避けましょう。ましては叱るなどはNGです。反論する、叱るなどはメンタルが弱っている相手にとって普段以上にダメージが大きく、それをきっかけに本格的にうつを発症してしまうことも少なくありません。そして、業務において、以下のような対処をできるかぎりすると良いでしょう。
- 定期的に業務の相談に乗る機会をつくる
- 業務量や担当タスクを調整し、残業や休日出勤をさせないようにする
- 目標数値などがあれば一時的に無くす、あるいは下方調整をする
- 担当する業務にサポート役を付け、責任や負担が本人だけに集中しないようにする
- 定期的なミーティングを設け、ストレスの状況を話してもらう
また、上記のようなコミュニケーションを通じて社員のストレスの度合いが大きいと感じたら、管理者が自分1人で何とかしようとせず、人事などに相談することを勧めます。人事を通じて社内の産業医や心療内科など、専門家の力を借りることを検討しましょう。
管理職が自身の範疇で極力サポートすることは大切ですが、医者やカウンセラーと同じ判断、対応まで行うのは困難です。任せるところは専門家に任せ、部下の復調を焦らず待つこと、ゆっくりと時間をかけて見守ることが大切になります。
次回は「復職したスタッフが自身の部署に配属された場合、どのように接すればよいか?」について伝えます。
著者プロフィール:南雲 文(なぐも ふみ)
立教大学 社会学部卒業。メーカー営業職、CS部門を経て2004年にゼネラルパートナーズ入社。障がい者採用コンサルタント、キャリアカウンセラー、人事部門等を経験後、2012年に精神障がいの方専門の就労移行支援事業所シゴトライ台東の立ち上げに携わる。現在はシゴトライ台東施設長として勤務。
資格:米国CCE,Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラー。
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