“売上”は、お客さまの「感謝の量」。顧客志向の営業とは?:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
営業ほど、「ありがとう」をもらえる職種は他にない。その面白さを体験してほしい。
では1〜4の流れを見てみましょう。
1、まず状況を聞く
「今は、どちらの製品をお使いなのですか?」
「A社の“製品α”を使っています」
「そうでしたか。教えていただいてありがとうございます。使ってみていかがですか」
「特に故障もないので、問題ないですよ」
「以前は、どちらの製品をお使いだったのですか?」
「10年前までは、B社の製品を使っていました」
「それは、安心ですね。ちなみに、製品αに変えたのは、何か背景があるのですか?」
「A社の営業マンと付き合いが長いんですよ。もう10年くらいになるかな」
「今後、どこかのタイミングで、切り替えの検討をすることもあるのでしょうか?」
「うーん、今はないかな……」
2、次に問題を聞く
「そうなのですね。それならば、安心ですね。ところで、伺ってもよろしいですか?」
「どうぞ」
「ぜひ、勉強のために、伺いたいのですが、A社様の製品に特定した話ではなく、“ちょっと不便だな、こうなると、もっといいのに”と思っていることはありますか? もし、あるとしたらで結構です。何か、こうなったらいいのにと思うことはありますか?」
「まあ、実は……あるとしたらだけど、アフターサービスはもう少し充実していたらいいかな」
「そうなのですね。どうしてですか?」
「最近は、機能が複雑になってきて、現場がうまく使えていないですよね」
「例えば、どんなことですか?」
(しばらく質問が続く)
「なるほど、ということは、深夜シフトの方にとって、ヘルプデスクが営業時間外なのが、不便になっている、ということですね」
「そうなんだよね」
3、その流れでリスクを聞く
「ちょっと変な質問になることをご容赦ください。その問題が解決できないと、どのようなことが起こるのですか?」
「そりゃ、マニュアルやネットで解決法を探すことになるよね」
「そういうことでしたか。でも、それの何が問題なのですか?」
「今、生産性の向上が会社の方針なんだよね。ムダは省かないと」
「と、おっしゃいますと」
「え、いや、だから、ささいなことだけど、この積み重ねが残業になってしまうんだよ
「教えていただき、ありがとうございます」
4、プレゼンの合意を得る
「解決策を提示できるかもしれません。お話させていただくのはいかがでしょうか?」
「じゃ、聞いてみようかな」
いかがでしょう。これで、プレゼンの合意が取れました。こうやって、お客さまの「不」を引き出します。いわゆるニーズを創るヒアリング法です。もはや、「状況」だけを聞く営業は、ニーズを確認しているにすぎません。ぜひ、この流れで、一つでも多くの不(潜在的なニーズ)を発掘してみてください。きっと、あなたに出会えてよかった、と思うお客さまがいっぱいできることでしょう。営業ほど、「ありがとう」をもらえる職種は他にない、それが私の確信です。
著者プロフィール:伊庭正康
らしさラボ 代表取締役(セールス・リーダー育成トレーナー)。
1991年リクルートグループ入社。営業としては致命的となる人見知りを4万件を超える訪問活動を通じ克服。リクルート社においても珍しいとされるプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞、累計表彰回数は40 回以上。その後、営業部長、フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。
2011年らしさラボを設立。営業リーダー、営業マンのパフォーマンスを飛躍的に向上させるオリジナルの手法(研修+コーチング)がリーディングカンパニーの目に留まり、年間260回の営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演を行っている。リピート率は91%。
また、ストレスコーピングコーチとして、ビジネスパーソンのメンタルタフネス強化の支援も行っている。近著には、『営業・セールストークのキホン(すばる舎)』『残業ゼロの人の段取りのキホン(すばる舎)』『仕事の速い人の手帳・メモのキホン(すばる舎)』『残業ゼロだからこそ目標達成!!本気でやるチーム時短術(明日香出版社)』『強いチームをつくる!リーダーの心得(明日香出版社)』など多数。その活動は、日本経済新聞、日経ビジネス、など多数のメディアでも紹介される。
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