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インタビュー

これを旅館と呼んでいいのか!? 老舗旅館「陣屋」が切り開く新たなビジネスモデル【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/4 ページ)

週休3日制などで注目を集める、鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」。彼らのビジネスはもはや旅館だけではない。成功事例そのものを商材とし、自社システムの外販から“旅館互助サービス”の展開まで、もはや旅館とは呼べないような事業をそろえた企業が誕生しつつあるのだ。

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旅館同士のネットワークで新たなビジネスを

 その一つが、「たすけあい」ネットワークサービスの「JINYA EXPO」だ。陣屋コネクトを導入している施設同士が連携し、食材、人材、備品といったリソースを交換できるプラットフォームで、ECサイトのような感覚で注文したり、希望するリソースの情報を発信したりできる。陣屋コネクトを利用していれば無料で利用できる。

 スキー場の近くにあるホテルなど、観光地には、必要なリソースの量に強い季節性がある施設は少なくない。全国展開しているチェーンであれば、スタッフの配置なども柔軟に行えるが、小さな個人経営の旅館だとそうもいかない。ITだけでは解決が難しい問題を解決するためのソリューションとして、陣屋自身も試行錯誤を続けている。

 「他の宿泊施設で陣屋コネクトの導入支援をする中で、ITだけでは解決できないことや、施設単体の努力ではどうにもならない問題に直面することが多かったんです。それを助け合いのネットワークで救えないかと考えたのが『JINYA EXPO』の始まりです。陣屋コネクトを導入している施設は全国に約300あるので、お正月やゴールデンウイーク、お盆といった時期を除けば、トップピークに合わせたリソースの移動ができるのではないかと思っています」(宮崎さん)

photo JINYA EXPOのイメージ。ECサイトのような感覚で品物を注文したり、希望するリソースの情報を発信したりできる

 陣屋はこれまで、信州別所温泉の旅館「緑屋吉右衛門」と人材や食材において、試験的に“助け合い”を実践してきた。緑屋吉右衛門は夏が客のピークで、陣屋は秋から冬にかけてが客のピークであるため、夏は陣屋コネクト活用のサポートを兼ねて、応援のスタッフを送り、冬は逆に陣屋にスタッフを送ってもらったという。

 「違う職場で働いてみると、本人たちのスキルアップにもなりますし、その宿のスキルやノウハウを持ち帰ることができます。宿同士、そして本人同士もWIN-WINの関係になれるなと。将来的には、研修目的などでも使ってもらいたいですね」(宮崎さん)

 食材についても、2つの旅館が共同で地場の生産者から食材を直接購入したり、仕込みを行ったりすることでコストダウンを実現したそうだ。今後は機械学習を使って、食材などの発注量を予測し、在庫確認や棚卸し作業も含めた自動化を実現すべく、開発を進めているそうだ。

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