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“東証を変えた男”が語る、金融業界の伝説「arrowhead」誕生の舞台裏――“決して落としてはならないシステム”ができるまで日本郵便専務が明かす(2/4 ページ)

2005年11月から2006年にかけて、システム障害を起こし、取引が全面停止するという事態に陥った東京証券取引所。世間の大バッシングの中、そのシステム刷新をやってのけたのが、現在、日本郵便で専務を務める鈴木義伯氏だ。当時、どのような覚悟を持って、“落としてはならないシステム”を作り上げたのか。

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 コンセプトは極めてシンプルで、「過去8年分の予算額を教えてください。その半分の予算で勘定系システムを提供します」というプロジェクトです。その上で「8年間継続利用してください」というのが条件でした。

 もう1つ、参加の条件として挙げたのが、「機能追加のために毎年10億円の投資をさせてください」ということでした。共同利用のシステムの場合、“機能追加のための予算をどこが持つか”を調整するのが難しいところなのですが、あらかじめ「毎年10億円の予算」を確保しておけば、この問題で頭を悩ませる必要がありません。

 さらにもう1つ、「預金量30兆円以上の規模の銀行数行にメンバーとして集まっていただく」という条件も挙げていました。この条件はハードルが高いかと思いましたが、それに見合う銀行が一定数以上集まらないと共同利用システムは実現しませんから、参加する銀行が自らほかの銀行に積極的に声を掛けてくれました。

 こうして複数の地方銀行で共同利用する勘定系システムの開発を始めたのですが、初回リリースは結果的には相当な予算オーバーになってしまいました。1400万ステップという膨大なプログラムを一気に開発したので、死ぬかと思いましたね(笑)。

中野: 私も実はもともと金融系のSIer(企業のIT導入支援、コンサルティングを請け負う企業)で開発の仕事をしていたので、この地方銀行の勘定系統合プロジェクトの話はたびたび耳にしました。金融業界ではとても有名な、大きなプロジェクトですよね。私は某都市銀行の合併案件に携わったことがあるのですが、下っ端の私でも死ぬかと思うくらい大変な仕事でした。鈴木さんの案件では、それぞれの銀行が異なる要件を持っているから、それをすり合わせるのはさぞや大変だったのではないでしょうか。

鈴木: 確かに大変でしたね。この課題をどう解決したかというと、集まった地方銀行の中でも熱心で、発言力や統率力がある代表の銀行さんと相談して、そこで決めた内容にほかの銀行さんにも従ってもらうという方法をとりました。

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