「場当たり的」が会社をつぶすに込める強い思い〜今こそ、総力戦で乗り切ろう!〜:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
自分たちの役割や理想のために企業活動をすべきなのに、成長を言い訳に、なんとなく「場当たり的」に考え、行動する癖がついてしまい、そこから抜けきれなくなっていないか。
自分の「思い」を明らかにするだけでなく、それによって共感してもらい、みんなの「思い」を統合しきって、戦略が腹落ちできるように、またそれを具体的にして順番をつけた戦術にみんなの魂が入るようにしていかねばならないのです。そうです。「場当たり的」であっては、みんなを不幸にするばかりか、自分が所属する企業を守り切れないでしょう。
それを、まさに身近で体現されたのが、上皇ご夫妻です。この30年間、戦争被災地や災害被災地に駆け付けられ、人をいたわる言葉をかけ続けられた言動を見ていると、お二人こそ、最も「場当たり的」でなく生きて来られた、これからの日本人のお手本ではないかと思えてなりません。言いたいこともたくさんおありだったでしょうが、ひたすら自分の役割を黙々と果たし続けてこられたことは、多くの方々が共感し、ご尊敬申し上げることだと思います。
そして、世の中の風潮も、こういうことを申し上げるとすぐに右翼とか変わり者とか思われた時代を通り過ぎ、特にあのあまりにも痛ましい東日本大震災以降、大きく変化したように思います。少なからず、人とのつながりや地域の大切さなどを強烈に意識させるきっかけになりました。そして、その結果として、日本人が本来もっていた利他の精神を再び思い出させてくれました。他人を蹴落とすよりも、互いの繁栄を望む。個人の利益よりも分け与えることの美徳を重んじる。人のために惜しまず、労力や時間を割くことを尊ぶなど、日本の本来の良さを見直す大きなきっかけになって気がしてならないのです。
平成から令和にかわるこんな時代の節目にこの本を出せたことを、本当に喜ばしく思っています。国も、企業も、また個人も、今こそ、「場当たり的」にならないで、戦略的に、物事をしっかり考えるようになってほしいと思います。逆を返すと、今、もう一度いい国に、いい組織をつくるには、そしていい人生を歩むには、と考える正念場が来ているともいえます。ここで考えないと自らを誇れる、また目的に対して大きな成果を得ることのできない国、企業、個人に成り下がってしまうでしょう。
本書では、その根源である「場当たり的」が発生するメカニズムを解明し、有効な解決策を提示しようと試みました。ひょっとしたら、企業だけでなく、日本国自体が、終戦以降抜け出せないでいるかもしれないこの課題に、思い切って、突っ込んで、挑戦してみたつもりです。もはや、時代の変化は激しく、国際情勢の変化もわれわれを待ってくれません。是非、この難局を抜け出すために、社員全員、また国民全員、総力戦で戦うヒントを少しでもつかんでもらえるとうれしいです。
著者プロフィール:北澤孝太郎(きたざわ こうたろう)
東京工業大学大学院 特任教授(MBA科目 営業戦略 組織担当)レジェンダコーポレーション 取締役
1962年京都市生まれ。
1985年神戸大学経営学部卒業後、株式会社リクルート入社。20年に渡り、通信、採用・教育、大学やスクール広報などの分野で常に営業の最前線で活躍。採用・教育事業の大手営業責任者、大学やスクール広報事業の中部関西地区責任者を担当後、2005年日本テレコム(現ソフトバンク)の執行役員法人営業本部長に転身し、音声事業本部長などを歴任。その後、モバイルコンビニ株式会社社長、丸善株式会社執行役員、フライシュマン・ヒラード・ジャパン バイスプレジデントなどを経て、現職。営業リーダー(組織長や部長、役員)教育の第一人者として、数多くの研修や講演の経験を持つ。現在、東京工業大学大学院 環境・社会理工学院の特任教授として、大学・大学院で日本初であり、現在も唯一の営業の授業を担当している。
著作に、『営業部はバカなのか』(新潮新書)、『優れた営業リーダーの教科書』(東洋経済新報社)、『人材が育つ営業現場の共通点』(PHP研究所)、『営業力100本ノック』(日本経済新聞出版社)、『まんがでわかる営業部はバカなのか』(ゴマブックス)『マンガ 営業力100本ノック』などベストセラー作品が多数ある。
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