現場リーダーに求められる「全体最適」の仕事術:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
「頑張っているのに報われないのは経営者や上司、他部門やチームメンバーに問題があるからだ」と思っている人は要注意!
企業経営にとって、今まさに求められているのは、そういった会社全体や組織全体を見て自らの仕事を最適化できる人材なのです。そして経営方針に向けて社員一人一人の仕事が全体最適化されることで、会社の利益につなげるために必要な仕事と無駄な仕事が整理され、組織全体の生産性は高まるようになるのです。
最適化のための3つポイント
ではこの部分最適の状態の仕事は具体的にどうすれば全体に最適化できるのでしょうか。
まず多くの企業の現場で見られるのが「経営方針が曖昧で分かりにくい」「経営者や幹部層から十分な説明がない」といって、分からない方針を分からないまま放置してしまっているという現状です。その状態を続けている限りはいつまでたっても会社の全体像は見えず部分最適から脱することができません。
このことから1つ目のポイントは、自社を取り巻く外部環境の中で自分の会社の経営状況がどういう状態なのか、そしてその上で会社が何を目指そうとしているのか、そういったことについて上からの説明を待つのではなく自分から情報を取りに行き理解しようとすることです。
そして2つ目が、自社の外部環境や経営状況に関する情報、会社の全体像や向かうべき方向性を理解した上で、いま自分がやらなければならないことは一体何なのか、本当にやるべき自らの役割や課題について検証しながら再定義をすることです。
さらに3つ目のポイントが、再定義後の「本当にやるべき自らの役割や課題」に取り組むために職場の仲間や上司、他部門などを巻込みながら協働関係を築くことです。
この協働関係を築く上で大切なのが「会社が向かう方向性の中で部内やグループ内、また部門間におけるお互いにとっての共通のベクトルは何なのか」を一緒に議論し考えるということです。
つまり会社の方向性に基づいて「私たちはどこに向かうべきなのか」「現場の中でいまお互いが最もやらなければならないことは何なんだ」そういった「目指す目的」や「解決すべき重要課題」をしっかりと議論し共有することです。
その「共通のベクトル」を基準として、それぞれが正しいと思っている判断に対して重要性や緊急性などの優先順位を付けることで、互いの「正しさ」を否定しなくても関係性を変え、組織の壁は壊れていくのです。
以上3つのプロセスを踏むと、組織全体のベクトルが次第に合っていき全体の最適化が進むのです。
部分最適を抜け出すことが将来への近道となる!
IT化、グローバル化など常に経営環境が進化と変化を繰り返す中、いまだ多くの日本企業が変革を実現できず苦戦を強いられています。しかしこれまでを振り返れば組織で働く私たちは決して努力を怠ってきたわけではありません。日々の長時間残業に耐えながら数々の業務をこなし、さまざまな課題に取り組み、時に自らのスキルアップや自己研さんを図りながら努力をしてきているはずです。
それでも努力が報われていないとするならば、まずやるべきことは、いま目の前でやっている仕事は本当に全体の利益につながるのか、もしかすると部分最適に陥っているのではないか、そういった全体最適の思考で物事を考え仕事を進めるということなのです。これまでの努力の中身を一度見直し、努力自体の質を変えていかなければなりません。そのことが自分の将来につながる近道となるのです。
著者プロフィール:石原正博
センターボード・代表取締役 全体最適化コンサルタント
1969年東京都生まれ。1992年学習院大学法学部を卒業し、安田信託銀行入社。法人営業、企業年金制度コンサル、経営企画業務等を経験。2005年1月 スコラ・コンサルトに入社。大手企業を中心に20年間で500社を超える企業への支援を行い、組織を動かしていくノウハウを修得。2011年独立し株式会社センターボードを設立。著書に、『会社が生まれ変わる「全体最適」マネジメント』がある。
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