テレワークでも、長く続く信頼関係を構築する方法:サイバーセキュリティマネジメント海外放浪記(2/2 ページ)
直接会うことは大事だが、高い信頼関係が築けていれば対面でなくとも何でも話せる関係は作れるのではないだろうか。
アメリカ人は特に電話会議を好む傾向が強いと感じているのですが、国際間での仕事に慣れていないためか、時差の概念をあまり理解しておらず、日本時間で午前2時とか4時とかの時間に平気で電話会議をセットしようとします。「世界を広く見るとタイムゾーンはアメリカ国内のものより広くて、アメリカが昼でも午前3時な国があるんだよ。その時、相手は寝ているから気軽に電話するのはやめよう」と教えると驚かれる、という経験を何度もしています。
テレワークでも信頼関係を構築する方法
「テレワーク万歳」とはいっても微妙なニュアンスは対面でなければ伝わらないこともあるため、究極的には直接会うことが大事ですが、高い信頼関係が築けていれば対面でなくとも何でも話せる関係は作れるのではないでしょうか。いかに信頼関係を作り、相手と自分の距離を遠く感じさせない(自分も感じない)距離感を保てるかが非常に重要で、これは日常的なやりとりや対面で会えたときにどうするかが重要になります。
当然ですが、サイバーセキュリティ関係の多くの相手とはしょっちゅう会うことはできません。1年に1回会えれば良い方で、なかなか会えない人は2、3年に1回、まれには10年ぶりということもあり得ます。たとえ10年ぶりでも一度築かれた信頼関係は有効で、10年前と同じように会話をすることができます。カンファレンスにいけばいろんな人に会えますので、そういう機会はなるべく逃がしません。
実際に会ったときは仕事の話もしますが、それ以上に仕事は関係ない話も多くします。私の周りだとカメラや写真の好きな人種が多いため「今どのカメラ使っているの?」や「こういう写真を撮りたいけどどうすればいいの?」みたいな話になることもあります。カンファレンス中の1日のスケジュールが終わった後にみんなで写真を撮りに行くということもよくありますし、早朝撮影会と称して朝6時くらいに集合してホテル近辺などを撮影し、その後朝食を皆で取ってカンファレンスに臨むということもやります。
また、自転車も趣味ですが、その方面の話題に敏感な人種とは夕食を食べながら自転車の話をしていると、気付けば3時間経過、ということも普通にあります。そういうときは「あ、そういえば仕事の話をするの忘れていたけどこんどチャットで話そう」という感じになります。お互いが参加する予定のカンファレンスの近場でサイクリングコースを探すということもあります。
2011年にマレーシアのクアラルンプール国際空港(KLIA)で撮影したもの。SNSにアップされている。このうち2人はマレーシアにいて、他の2人(インドネシア人とタイ人)は、偶然同じタイミングで乗り換えのためにKLIAにいたので久しぶりに会おうということで空港のフードコートで会って記念撮影。こういうちょっとの時間でも会える機会は逃さない。
このように信頼関係を築き上げておくことで、日常的に迅速なコミュニケーションができるようになると考えています。
新型コロナウイルスもサイバーセキュリティも、最悪の事態を想定し、備える、できる限り慣れておく
遠隔でのコミュニケーションに慣れるにはある程度時間が必要です。それは自分もそうですが相手も同じです。テレビ会議を利用した打ち合わせもリアルとはちがった場の「読み方」があると感じています。こちらも慣れが必要です。本番になって初めて使っても慣れるまで時間がかかってしまうので、日常的に、たまにでも使っておくことは大事だと思います。避難訓練と同じような発想でしょうか。
同じように「サイバー攻撃による甚大な被害が発生!」となったときに、いざ、動けるでしょうか。こちらも日頃から訓練していなければ、その時だけなんとかしようとしてもうまく動くことはできないでしょう。日頃から練習していなければ立ち上がりまでにオーバーヘッドが掛かります。準備していなかったのであれば仕方のないことですが、オーバーヘッドがないにこしたことはありません。多くのスポーツ選手も言っているように、基礎が大事、日頃練習していなければイザというとき思うようにできないものです。
全社で一気にテレワークにシフトしようとしても難しい、ということを多くの企業が実感しています。ネットワークのリソースの問題、テレワーク用ソフトなどのライセンスの問題、社員の自宅のネットワーク環境や作業環境の問題、ITリテラシーの問題などさまざまな課題を各社が抱えています。全社員が一気ににシフトするのではなく、段階的な移行が現実的である場合が多いようです。
本当にテレワークをしなければならなくなるギリギリまで検討しなかった企業は、緊急事態宣言が出てから「どうしよう」と慌てている、という話も聞きます。新型コロナウイルスによってさまざまな変化が訪れるといわれていますが、大きな変化は「一気に」訪れるよりも、「徐々」訪れるほうが良いのは間違いないでしょう。先を見通すのが難しい状況ではありますが、最悪の事態を想定し、それに備えるというスタンスが求められています。
著者プロフィール:鎌田敬介
Armoris 取締役CTO、『サイバーセキュリティマネジメント入門』著者
元ゲーマー。学生時代にITを学び、社会人になってからセキュリティの世界へ入る。20代後半から国際会議での講演や運営に関与しながら、国際連携や海外セキュリティ機関の設立を支援。2011〜14年 三菱東京UFJ銀行のIT・サイバーセキュリティ管理に従事。その後、金融ISAC創設時から参画し、国内外セキュリティコミュニティーの活性化を支援。並行して12年間に渡り、国内外でサイバー攻撃演習を実施するなど、経営層・管理者・技術者を対象に幅広く実践的なノウハウをグローバル目線で届けている。金融庁参与も務める。
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