第2回「つなぐ」力を磨く「能力モデル」:「スモール・ハピネス」で仕事も生活もポジティブになる?!(2/2 ページ)
よいパフォーマンスは、ハピネスを生み出す重要な源で、スモール・ハピネスとパフォーマンスとは切っても切れない関係にある。
(は)次は「試作提示」だ。新時代では、時間をかけて力作を生み出すよりも、できることをさっとやってとにかく形(アウトプット)を生み出し、顧客の反応を見るのが基本的なお作法だ。試作の一発目で、顧客ニーズを充足するようなアウトプットを生み出せれば、パフォーマンスはめでたく成功でそこでゲームは完了する。ただ、なかなかそうはならず、その後も試作を重ね、その過程で能力不足やツール・材料の不備を満たすことなど、パフォーマンス成功への必要条件が増えていくことも十分ありえる。
他方、スモール・ハピネスの方は「へたな鉄砲も数打ちゃあたる」的な幸運のピンそばに位置する。とにかく毎日必ず何か試作しアウトプットを生み出すことだ。アウトプットとは、会社レベルなら「製品・サービス」などであり、個人レベルならレポートや分析結果や資料や会議での発言などだろう。
自分が仕事で生み出すものなら「何(WHAT)」でもよい。一日で完了しない長い報告書や企画書やプログラムを書いている場合も、毎日、ある部分を生み出すことはできる。その際、試作とはそれが製品だろうと文章だろうと、情報(bit)か物質(atom)をつないだもののはずだから、スモール・ハピネス(1)のつなぐをクリアできる。
アウトプットを生み出せば、「スモールなやった!」もでてきてスモール・ハピネス(2)のポジティブ感覚もクリアできる。小刻みな試作提示からうまれる達成感を都度味わうこと、これぞスモール・ハピネスを味わう「スモールな王道」である。
(に)一発目の試作提示でうまくニーズを充足できないようなときには、力ずくで試作を重ねるより、むしろ試作する「能力」を高めることや、ツールや材料を変えることに取り組むほうが良いかもしれない。
「能力」についていえば、試作のアウトプットを高めて顧客ニーズを満たしパフォーマンスを成功させることに狙いを定めて、必要な「能力」を得ることはかなりの難題だろう。それはそれで取り組みつつも、スモール・ハピネスを生み出すためだけの能力開発であればかなりゲットしやすいので、そちらに狙いを定めてみよう。
というのも能力開発の最小単位は、新しい知識を得ることであり、知識習得はそのままスモール・ハピネスが生まれる機会となりやすいからだ。情報論的にいうと、知識の成立には、多くの場合、ある情報と別の情報とのつながりの成立が絡む。
簡単な話、何かを読んだり、見たり、聞いたり、話しあったりしていれば、1つや2つ、新しい情報のつながりたる新知識を得ることがあるだろう。スモール・ハピネス条件(1)はクリアだ。
そこからスモール・ハピネス条件(2)「やった!」感の成立に向かうが、ここで一つ裏技を紹介しよう。それは(2)のバーを下げることだ。ただバーを下げるというとやや後ろ向きなので、それを前向きに言い換えて、「感覚を鋭敏にする」ことを練習する。
すなわち、わずかでも新知識が得られたら、それに付随する微かなポジティブ感覚を見逃さない。気のせいかなくらいでも、心を澄ませてポジティブな感覚を体感する。一種の自己調教だ。ジグソーパズルの例でいえば、部分的にいくつかのピースがつながっただけで、微かに生じる喜び(気のせい)を見逃さない。「スモール」を構成する「微かさ」を感じ取るスモール体感を研ぎ澄ませていく。間違っても自分に厳しくして体感のしきい値をあげすぎないようにしてほしい。
(ほ)&(へ)人間とは道具(ツール)を使う動物である。能力が試行を通じてアウトプットを生み出す際に、ほぼ必ず道具や材料を用いる。道具や材料の中には、能力自体を高めるもの(能力を高める教材や先生、など)と、現在の能力のままでアウトプットの価値を高めるもの(材料など)とがある。パフォーマンスの観点からは、こうした道具や材料によって、「試行」で価値あるアウトプットを生み出し、顧客ニーズを充足できればよい。
ここも深堀の余地が相当あるのでそれはまたの機会として、スモール・ハピネスについていうと、さまざまな用途で探し求めていた道具や材料に出会えば、それだけで「やった!」となり(2)をクリアするだろう。もとより道具や材料は能力・試行とつながる性格のものだからスモール・ハピネス条件 (1)はクリアしているはずだ。
さらに、道具や材料を実際に使い始めて、その使い方が分かれば、それも(1)(2)を満たすだろう。幸い、私たちは、最新のテクノロジーから伝統的な道具・材料まで、スモール・ハピネスの生産資源にはことかかない世界と時代に生きている。
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