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AIで店舗の「3密」対策、社内ハッカソンから2週間で実装――サツドラホールディングス 代表取締役社長 富山浩樹氏緊急特集 デジタル変革の旗手たち――緊急対応編(2/2 ページ)

北海道を中心に約200店舗を展開するドラッグストアチェーン「サツドラ」は、コロナ禍においてどんな「英断」をくだしたのだろうか。

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 このプロジェクトでは、サツドラ店内にAIカメラを設置し、店内のデジタルサイネージを見た来店客が、実際にその商品を買ったかどうかを可視化する。デジタルサイネージならネットと同じくABテストも実施できるため、効果的なクリエイティブに改善していくことも可能だ。また、ネットで話題の商品やメーカーのECサイトで直接販売されているD2C(Direct to Consumer)商品を陳列し、デジタル広告のアクセス数とリアル店舗での売上に相関関係はあるのか、といったところも可視化していく予定だ。


AIカメラ付きデジタルサイネージに映し出される商品。果たして販促効果は……?

 ECサイトが当たり前のように顧客行動を分析し、効果測定をしながら顧客軸で改善を行う一方、リアル店舗はじっとその場に立っているだけのアナログな世界だった。「これまでは、“お客さまはこうだろう”、“これが売れる売り場なんだ”と経験則から推測するしかありませんでした。AIカメラを活用すれば、その棚に立ち寄ったお客さまの人数や、商品を手に取った、戻したといったことが分かってきます。さらにID-POSデータと一気通貫できれば、改善のスピードも精度も変わってきます」(富山氏)

小売のDXを阻む“ラスボス”、POSのクラウド化に着手

 並行して、バックヤードでは、POSをはじめとする基幹システムのクラウド化を進めているという。リアルタイム性の高い顧客軸のマーケティングと、それに追従できるバックヤードがそろって初めて、米国や中国の先進企業と戦えると富山氏は考えている。

 「小売におけるDXの課題として、デジタルマーケティング領域と基幹システムが分断されてしまっていることが挙げられます。理由は、基幹システムが昔ながらのもので融通が利かないこと。そのため、アプリを作ったとしても、できることはせいぜい、“アプリ上でクーポンを出してレジで見せると割引される”といった仕掛けに落ち着いてしまう。それでは、在庫管理、受発注管理といった小売のコアなオペレーションの中に入っていかないんです」(富山氏)

コロナ禍は本当の意味での「地方創生」を問うている

 ドラッグストアの枠を超え、デジタルを武器にとことん独自路線を突き進むサツドラ。富山氏の熱意はどこから生まれてくるのだろう。

 「米国では、ドラッグストアが寡占化されていく姿を見てきました。日本でも同じ流れが来るだろうと。サツドラは地域ではシェアナンバー2ですが、全国でいえば下位です。トップランナーを追い掛けているだけではダメ。差別化を図らないと企業価値がなくなるという危機感があります」(富山氏)

 富山氏が描く差別化の形は、自社はもちろん、オープンイノベーションで提供するソリューション、プラットフォームを通じて地域経済を活性化させることだ。6年前、北海道共通ポイントカード「EZOCA」を立ち上げた動機から何も変わっていないが、コロナ禍で、地域への思いはより強くなったという。

 「新型コロナによって改めて実感したことがあります。国に頼りきりではなく、地域が自立して意思決定し、その地域にあった施策を迅速に進めていくこと、そして、地域から良い事例を発信していくことの重要性です。ビジネスも同じです。市町村では経済圏として小さすぎて経済的価値を生むのが難しい。でも、全国となると規模が大きいがゆえ焦点がぼやけ、スピードも出ない。今後は、道州制単位の経済圏が価値を生むんじゃないかと確信しています。僕らは、“ドラッグストアとして”ではなく、“ドラッグストアを活用して”、地域経済が循環する仕組みを作っていきたいです」(富山氏)

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