第4回:仲間づくりの一人旅モード:「スモール・ハピネス」で仕事も生活もポジティブになる?!(2/2 ページ)
問題解決の方法を自分で決め、解決の結果にも責任を持つ。人の助けが必要になれば、旅先で道を尋ねるように、自分のイニシアチブで見ず知らずの人にでもアプローチする。
ここからスモール・ハピネス・ゲームが始まる。まず最小限の得点(スモール・ハピネス得点)を確保する。最小限とは健康上のプラスだ。歩数目標達成への貢献でも、体感レベルでのリフレッシュでもよいのでハピネスをちょっとゲットする。加えてリフレッシュされれば、机に戻って仕事しようかなというやる気が起きて少しハッピイだ(マメに加点する)。
実際、戻って改めて仕事にかかると何かでてくる確率は高まり、何か出てきたらもちろんハッピイ。何も出なくても、出るかもと期待して作業する間はハッピイ。さらに、散歩で体がほぐれることに伴い、散歩中に「何かがほどける」感じが得られればしめたものだ。というのも、行き詰まった状態とは、物事がこんがらがっている状態だからそれがほどける感じは大切だ(トイレにいってうまくいきそうな感じと近く、この感じだけで少しハッピイ)。
あるいは、歩くうちにマインドがオープンになると、いろんなことが入るスペースができて、そこにヒントや答がぱらぱら降りてくる(それらを紙切れに書き留めるのはハッピイの連続)。
いずれにしても、日々の団体旅行時間が減った分を、「考えながら散歩(ミニ一人旅)」に充てれば、そのタイミングや時間やコースなどのコツがつかめてくる。コツをつかむたびに「やった!」感がうまれ、スモール・ハピネスをつかめる。
さらに、一人旅の範囲をHOWから広げればスモール・ハピネスの機会も広がる。第2回で話した6つの節目(情勢解読、需要把握、試作提示、能力構築、道具探索、材料調達)の全てでスモール・ハピネスを味わうチャンスがある。
団体旅行客として指示に従っている限り、ジグソ―パズルの例と同じでハピネスは生じにくい。一人旅モードに切り替えて自分のリスクでゲームをプレイして、初めてハピネスをフルに満喫できる。
といっても、正面から上司などに交渉して「自分に全て(の節目)を任せてください」とたんかを切るようなリスクまで負う必要はない。上司などからの限定的な指示は素直にそのまま受けつつ、「上司が与えたこういう問題設定でよいのか」と自分で勝手にWHATを考えたり、さらには(上司はふれもしなかった)「そもそもなぜこの問題なのか」とWHYを考えたりすればよい。
その上で、あなたが指示された範囲のこと、例えば「どう問題を解決するか」などHOWに取り組む際に、勝手に考えたWHYやWHATをHOWに反映させてみる。いわば仮想で「フルの一人旅」を行ってしまうとよい。一人旅後の報告で上司に成果や答をもっていくときも、自分にふさわしい、一人旅のお作法を工夫したい。
例えば、上司に対して、「本来あなたが考えるべきことを私が考えました」などというのは無用に挑発的だろう。それよりは、上司を旅先で出会う他所の人と見立てて、リスペクトをはらって「このHOWを行う際、私は、このようなWHY・WHATを推定しましたがいかがでしょうか」と尋ねる方がよいか。いや、かえって嫌みか。いずれにしても、上司も含めて人々との距離感・人間関係に敏感になることも一人旅では重要だ。(図3)
実は、第3回でのべた人間関係についても団体旅行客から一人旅モードに切り替えるとスモール・ハピネスを生み出す機会が増す。団体旅行の人間関係は、組織が決めたおりの中で一緒にいる人と仲良くすることにとどまりがちで「井の中の蛙」間の関係になってしまう。
一人旅モードに切り替えることではじめて、第3回でのべた6つのポイント(ギブ・アンド・テーク、リアル・リモート併用、量、質、多様性、ポジショニング)をフルに生かしてスモール・ハピネスを味わうことができる。
例えば、一人旅をすると、行く先々で知らないことに出会い、誰かに尋ねたり、誰かの支援を得ることに迫られる。そういう中でもギブなしでずっとテークばかりというのは無理だから、自然とギブ・アンド・テークのスキルが磨かれる。一人旅というと一匹狼のイメージが浮かぶかもしれないが、新時代の一人旅は、行く先々で仲間をつくる旅である。犬・サル・キジを仲間に加えて鬼退治をした桃太郎のイメージである(代替イメージとして「Lead India The Tree」という動画もお薦めだ)。
最後に一言。団体旅行客モードから一人旅モードへの切り替えは、今の組織を飛び出して転職せよと勧めているのではない。転職しても、転職先ですっぽりポチのように団体旅行客の座におさまれば元の木阿弥だ。今いるところで、「スモール・ハピネス付き一人旅スキル」を磨くのが先決である。
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