フジテック、聖域なきDXへの挑戦:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)
難しいといわれる製造業のテレワーク。試行錯誤から得られた気付きやアドバイス、コロナ危機を乗り切るための情シスの役割について、フジテック デジタルイノベーション本部 常務執行役員 デジタルイノベーション本部長の友岡賢二氏が語った。
情報システム部がデジタルイノベーション本部に
2019年4月、フジテックは、情報システム部をデジタルイノベーション本部に改組した。特筆すべきは、これまでのコストセンター機能に加えて、R&D機能と予算を持ったことだ。
1つの成果として、今年4月、エレベータの新商品にGoogle Cloudを活用したデジタルサイネージのサービスをオプションとして追加した。情シスが、商品開発プロセスに初めて参加した。小さな一歩だが、今までとは違うDX的なサービスをリリースすることができた。
製造業の商品開発に必要なことは、今も昔も変わらない。「『現場、現物、現実』『やってみなはれ』といった精神は普遍だと思っています。ただ、概念としては、『デザイン思考』や『グロースハック』へとアップデートすべきです。具体的には、まずはサービスや機能を作り、それを運用していく中で課題を見つけて現状を把握します。次に、それを解決する仮説を立てて検証し、その結果を実装し、改善していく。製造業の商品開発にも、そういったグロースハックのアプローチが必要だと考えています」(友岡氏)
武闘派CIOのイノベーション大作戦
終盤で友岡氏は、イノベーションに臨む心得を示した。
虎の尾を踏むな
虎がいたら逃げろ。イノベーションはゼロからイチを生むことなので虎、つまり既存システムやプロセスといったルーティーンがそこにあれば、すでにゼロではない。それは単なるカイゼンである。虎のいないところを探そう。
アリの穴一作戦
大きなイノベーションを目指すのではなく、アリが通れるくらいの小さなイノベーションの穴をあける。最初の変革は小さくて良い。どこに穴をあけるかを常に探すこと。
どこまでもPoC作戦
「PoCならいいよ」と言われたら、普及率7割くらいまでPoCでいってしまうのがお勧め。現場での効果を十分実感できてから、本番移行を宣言したら良い。
抵抗勢力に抱きつけ
ボクシングのクリンチのように、強い抵抗相手には距離を詰めて抱きつくぐらい寄り添うことが重要。抵抗勢力と距離を置いてはダメで、相手が「もういいから」と言うぐらい諦めずに寄り添おう。あとは愛嬌も重要。愛嬌で難局を乗り切ろう。
夢を持とう
不確実な時代には夢が生きる力を与えてくれる。同じ夢を見る仲間と志を立てて頑張ろう。
友岡氏は「DXの目指す姿は民主化です。社会でも、会社においても情報を通して人々を力づける。社会の分断を否定して、テクノロジーで全ての人に優しい社会を、自分たちでアップデートしていきたいと考えています」と締めくくった。
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