検索
連載

少数の「斜に構えたメンバー」の悪影響を排除するリモートワーク時代の理想的な職場の仲間との関係性(2/2 ページ)

職場への満足度調査をすると肯定的回答者が多い結果となるが、経営者は危機感を抱いており、人事部や現場のリーダーたちも年々状況が思わしくなくなってきているということを肌で感じているようだ。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

 この二極化の原因は何かということだが、それぞれの職場にさまざまな固有の事情がある。多くはささいなことがきっかけとなっている。例えば、リーダーとメンバーとのコミュニケーション量の多寡などもその原因となり得る。相手によって柔軟にコミュニケーションのスタイルを調整できるような優れたリーダーは多くはない。

 たいていは誰に対しても変わらぬ一辺倒なやりとりとなる。すると、そうしたスタイルが合うメンバーと合わないメンバーとが当然おり、合うメンバーとのコミュニケーション頻度は増え、そうでないメンバーとは疎遠になりがちとなる。ただでさえ、管理職の側でのパワハラ懸念が年々強くなり、話しやすい部下とばかり話す傾向は強まっている。

 このような場合、リーダーとの接点が少なくなったメンバーは不公平感を感じ、職場や仕事への不満につながっていく。リーダーの公平性は非常に重要であり、公平性を欠くことが最も不満につながりやすい。リーダーとの接点の少ないメンバーは、社会的欲求や承認の欲求などの根源的な欲求が満たされづらい状態が続き、不満とストレスとを蓄積していくことになる。

 結果として、職場での診断の結果が二極化することになる。しかし、統計上は悪くはない結果として見過ごされ、放置されることになる。言葉として語弊があるかもしれないが、私どもは、こうした少数派の孤立し、強い不満を持つ人たちを「職場難民」という言葉を使って、人事部の人たちと対策を話し合っている。

「職場難民」を出さないことが肝要

 職場の状況を思わしくないとして改善策を打つ場合にも、全体の状況を良くする方向での対策では的外れとなる。職場全体としてまとまらないことで取組み自体が形骸化していくか、あるいは、職場難民の人たちがますます孤立を深めていくことにしかならない可能性が高い。そうではなく、職場難民を出さないようにすることが肝要なのであり、その点に焦点を絞った対策が求められる。

 それにあたって、やはりまずは可視化である。対話の機会を増やし、メンバー一人一人の現在の状況や感情について理解に努め、職場難民やその予備軍が特定できたら、不満の原因となっている状況を明らかにし、その状況を改善したり、緩和したりするための対策を優先的に講じていく必要がある。

 実際には、職場難民は本来特定するまでもなく、明らかなケースの方が多い。普通に観察し、対話していれば、孤立していたり、不満を持っていたりするメンバーは容易に分かるはずなのだ。たとえ本人が表面的に取り繕っていても、必ず態度や言葉の端々にそれは出るものである。しかし、それが分からない、あるいは分かっていても放置してしまっている状況こそが問題なのだ。

 周囲の人たちも余裕がなく、他者に無関心であって、そこに気付かない場合もあるだろうし、気付いていてもあえて関与しない場合もあるだろう。しかし、そうした状況を放置すれば、職場難民の人たちだけの問題では終わらない。彼らが抱くネガティブな感情は確実に職場全体に広がり、メンバー各人の幸福度を低下させ、メンバー同士の関係性を悪化させ、生産性を低下させる。感情を媒介にして職場全体に広がるのだ。

 「ネガティブ・バイアス」の強力な影響により、ネガティブ感情を抱く少数の人たちが職場の感情を決定づけてしまう。結果として、職場力、チーム力を衰退させる方向へと向かわせることになる。そういう事態を招かないためにも、一人一人の感情への配慮が不可欠なのである。特にリモートワーク環境下においては、個々人の状況が把握しづらいがゆえに、なおさら注意を要するのである。

著者プロフィール:相原孝夫(あいはら たかお)

人事・組織コンサルタント、作家、HRアドバンテージ 代表取締役社長

マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン) 代表取締役副社長を経て、2006年4月に当社設立し代表に就任。

慶應義塾大学商学部卒業、早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。

1965年生まれ、栃木県宇都宮市出身。1994年にマーサー社に入社以降、コンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、グローバル人材マネジメント、M&A後の人事・組織の融合等のコンサルティングに従事。

HRアドバンテージでは、人材・組織・仕事の可視化を軸にした、人材力・組織力の向上支援に力を注ぐ。旧労働省大臣官房政策調査部研究会委員、総務省研究会委員、日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

著書に、『バブル入社組の憂鬱』『ハイパフォーマー 彼らの法則』『会社人生は「評判」で決まる』『コンピテンシー活用の実際』(以上、日本経済新聞出版社)、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか 』(幻冬舎)、『図解戦略人材マネジメント』(東洋経済新報社)ほか多数。

日経ビジネススクール、経営アカデミー(日本生産性本部)、早稲田大学ビジネススクール他での講義、講演、セミナーのほか、新聞、専門誌への寄稿、コメント多数。

主な著書に『会社人生は「評判」で決まる』(日本経済新聞出版社)、『ハイパフォーマー 彼らの法則』(日本経済新聞出版社)『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』(幻冬舎新書)など多数。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る