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第3回:決断力を高める人は、「鵺(ぬえ)」のようなものを自分の中に抱えておける人マネジメント力を科学する(2/2 ページ)

「決断力(決める力)」を持つに至る人の7つの思考と行動とは。

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 一方ではこのタイプの若手・中堅メンバーは、部長や役員、社長からは「面白いやつ」だと思われていることも少なくありません。経営層から見れば、彼、彼女に「何が見えているのか」が分かるからです。

 将来トップに抜てきされる、ごぼう抜き昇進することが多いのは、このタイプの人材です。会社としては、いかにこうした「全体が見えている」メンバーを潰さず、埋れさせずにリーダーへと登用していくかが非常に重要です。

いざというときの決断のために、平時にやっておくべきこと

 3つ目に「直ちに整理せず、別の意味の可能性を考慮できる人」とあり、2つ目には「強烈な目的意識だけでなく、偶然の活用を知っている人」とあります。これはどういうことでしょう?

 秋山さんは、将来「良い情報を集め判断できる人」になる人は、「マネージング・アンビギュイティ」(あいまい性をマネジメントする)ができる人だと言います。あいまいな情報・状況を、あえて分かりやすく整理したり定義付けしてしまったりせずに、あいまいなまま持っておくことを指しています。

 一見、決断とは離れる印象があると思いますが、これは「いざというときに決断を下す」「決めるべきときに決める」ことができる力を溜めるためのコツを指しています。

 平時においてはさまざまに入ってくる情報や状況について整理したりまとめたりせずに、あいまいな情報・状況を、あいまいなまま持っておくことがすごく大事なのです。言語化できないもの=「鵺(ぬえ)」のようなものを、そのままキープする。いざというときのために何か使えるかもしれないぞと抱えておける人は、その時が来たる際に、「その時たまたま」誰かの言葉や何かの出来事、出逢いで触発され、一気に着手事項を即断したり、これまで取り組んできた事業についてピボット(軸足を置いての方向転換)をかけたりします。

 決断が早い・速い人とは、実は平素からずっと懸案の事項について考えていたり情報収集をしていたりするからこそ、いざというときに決断までの時間が短く(早く)て即断できる(速い)のです。どう決めるのかという判断軸・決め方を事前に考え尽くしているという点も見逃せませんね。

 インパクトある決断はこうして起こり、それがエポックメーキングなビジネスへの着手の契機となったり、会社の方向性を大きく変えた「あの決断」と後々呼ばれたりするのです。

 ちなみに経営者力診断では、「決断力(決める力)」の有無を評価するポイントとして、「事業や経営での意思決定への主体的な参画があるか」「多様な意見・利害関係の中でも最適な判断をすべく動いているか」を見ています。ぜひ受検してチェックしてみてください。

著者プロフィール:井上和幸

株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに

早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。


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