第44回:1on1が営業の“詰め会”……Z世代が「ダサい」と去っていく会社 古い組織体質を変えるために、営業トップに求められる観点:マネジメント力を科学する(1/2 ページ)
営業部長にはマネジメント、リーダーシップ、人材育成の3要素が不可欠で、そのうえで外へ出るべきだ。
エグゼクティブの皆さんが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。今回から、AI時代に難易度を増していると言われる"営業力"強化をテーマに、東京工業大学 大学院の特任教授を務め、日本で初めてMBAでの営業カリキュラムを受け持つ北澤孝太郎氏をゲストに迎え、当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談からお届けする、第2回です。(2024年5月14日(火)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:これからの会社の成長の鍵を握る![決定版]営業トップはこう戦え!」)
かつての「営業部」と、今の「営業部」の違い
「営業は“業を営む”こと」。この言葉には、あらためてハッとさせられます。そもそも「営業」という語が当てられた当初、営業とは単なるセールス行為にとどまらず、ビジネス全体をつくる営みを意味していたのではないか──。
北澤さんはこう振り返ります。かつて営業部の中にはマーケティングも経理も商品企画もありました。分業化が進む過程で、マーケティングや営業経理、商品企画などが次々に独立し、営業に残ったのは主としてセールス機能になっていきました(物流の受け渡しは分かれていた場合もあるが、当時の大半の機能は営業内にあった)。
今で言えば、元々の営業の“くくり”は事業部へ移行したともいえるでしょう。
“売れない仕組み”が踏襲されていく
北澤さんいわく、日本では各機能に“親分”が生まれるため、いったん分かれたものを再び束ね直すのが極めて難しいのだと。
組織は肥大しやすく、いったん分けて“親分”を付けてしまうと、その“親分”を外しづらいのですよね。北澤さんは「それが日本企業だと言える」と指摘します。
そういう意味では、いま改めて『営業』や『営業部長』の捉え方そのものを変える必要があるのではないでしょうか。
北澤さんの主張は明確で、経済環境が上向きから下向きに変わった今、これまでのような組織の分割、分業はもはや合理的ではない、と。
僕は、KPIマネジメント自体は意味があるものの、全社で均一化した一律KPI運用を営業に強いる風潮〜特にスタートアップでもよく見かけるそれは、各現場の現実にマッチしておらず危ういと、さまざまな企業を見ていて強く感じています。これに対して、北澤さんの答えはシンプルです。「まずい。それこそ、売れない仕組みの踏襲だよね」。
営業リーダーに不可欠な3要素と「外部統合」
北澤さんは「外部統合」を説きます。「イノベーションは“大きな変化”だけを指すのではありません。小さな改善や工夫もイノベーションです」と前置きした上で、営業部長には〈マネジメント/リーダーシップ/人材育成〉の3要素が不可欠だと言い、そのうえで、「営業部長は外へ出るべきです。他社の取り組みや伸びる技術を探索し、場合によってはM&Aの情報を集め、良い人材がいれば口説きます」──これらすべてが営業部長の仕事であり、イノベーションそのものだと強調します。
この定義で営業部長を運用できている会社は、非常に少ないのが現実ですね。
誰も教えてくれない“営業部長の職務”
課長までは“何をすればよいか”がなんとなく見えるが、部長になった瞬間に誰も教えてくれません。「部長は何をするのか」を誰も語らず、各自が手探りでコツをつかむしかないのです。北澤さん自身も、35〜36歳で部長に就任後、2〜3年でようやくつかみ、そこから一気に仕事が楽しくなったと言います。
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