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第44回:1on1が営業の“詰め会”……Z世代が「ダサい」と去っていく会社 古い組織体質を変えるために、営業トップに求められる観点マネジメント力を科学する(2/2 ページ)

営業部長にはマネジメント、リーダーシップ、人材育成の3要素が不可欠で、そのうえで外へ出るべきだ。

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 北澤さん自身は、ビジネスの起点やヒントの探索までを『部長の職務』と据え、自ら動いていたそうですが、一般的には組織が整っている会社ほど、“情報源はメンバーや課長、部長は統括役”という運用が多いですね。

 「現場に行ってくるのは(課長以下の)お前らだろ」という空気が存在しているのもJTC(Japanese Traditional Company)を中心とする日本企業の特徴だと感じますが、北澤さんはそれこそが組織も会社もダメにするとし、「役員が何をすべきか」が曖昧なため部長の役割も曖昧になっていると問題点を指摘します。

 オーナー社長やベンチャーの社長は、外でネットワークと情報を貪欲に拾い、新たな事業をつくります。その行動様式が一般化する一方で、部長の役割定義は曖昧なままです。トップマネジメント陣が自らイノベーションを起こさない限り、日本は変わりません。新しい価値をつくらねばならない今こそ、その機能を営業部長が取り戻し、担うべきだと主張します。

共感を生む営業戦略

 北澤さんは、営業活動の本質の7割は“新しい価値づくり”だと位置づけます。中堅・中小企業ではマーケティングを内製せざるを得ず、セールスの役割比重は1割程度にすぎないこともあります。だからこそ、営業部長が先頭に立ち、イノベーションのネタを持ち帰り、毎日「どう新しい価値を生み出すか」を考え続ける会社が強くなるのだと。

 具体の作法としては、北澤さんが提唱する「北澤モデル」があります。まず自社(自分)が何をしたいのかという“思い”をつくり、その思いに共感してもらいます。高度成長期のように、情で押し切る売り方では通用しません。価値がなければ買ってもらえない時代です。

 「この会社とやりたい」「この営業から買いたい」と思ってもらえるよう、共感を生む戦略・戦術をどう設計するかが鍵になるのです。

若手が「ダサい」と感じて離れる組織

 この対談を進めている中で、参加者から「営業部長は社内政治に強い人という印象。上場子会社などで特に。外部統合は執行役員が担う運用。大企業がベンチャー的になるイメージは湧きにくい」という声が寄せられました。

 これに対して北澤さんは現場の変化を語ります。東工大でも、優秀な学生は自ら起業したりベンチャーに進みます。保守的だったりコミュニケーションが弱い層が大企業へ、という傾向がここ2〜3年で急速に強まったというのです。

 北澤さんは、「ダサい」と感じた若手が辞めていく最大原因は“キャリア自律”にあると続けます。

 この点は僕も合意で、僕のキャリアコンサルタントとしての経験知見から、若い世代は“この企業にいて自分のキャリアが伸びるか”で判断し、得るものがないと見れば離れます。社内政治に埋没する上司の姿は、若手にとって“ダサい”象徴であり、離職を加速させます。

 その観点からも、営業部長がビジネス開発を自ら日々やり、背中で示すことが、メンバーたちをワクワクさせ、次の挑戦を生む土壌になると思います。

 しかし現状は、「『行ってこい』『どうなんだ?』の号令だけ」「1on1が“営業の詰め会”になる」といった営業部長、上司たちのコミュニケーションは、最近本当に多く耳にします。北澤さんは「それはちょっとね」と苦笑い。

 これでは若手は「自分はそうなりたくない」と離れていくばかりで、まさにそこに、組織の未来を左右する分岐点があるのです。

著者プロフィール:井上和幸

株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに

早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。


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