業務プロセス改革に必要なのはビジネス部門とIT部門の協力関係だ。しかしビジネス側は変革意識が低く、旧態依然とした業務手法をなかなか捨てられないことが阻害要因になっているという。
社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は9月3日、4日に、ユーザー企業の情報システム部門を対象としたセミナーイベント「IT ガバナンス 2008」を開催した。初日のコンサルティングセッションでは、ガートナー ジャパンのコンサルティング部門でディレクターを務める和田智之氏が企業におけるビジネスプロセスの革新について講演し、BPM(Business Process Management:業務プロセス管理)を推進する上での課題と解決法を提示した。
「業務改革のためのスキルがビジネス部門とIT部門の双方に欠けている」――和田氏は日本企業の現状をこう指摘する。ITを活用してBPMを推進するには、ビジネス主導の業務プロセス改革とIT主導の業務プロセス改革の融合は不可欠だ。しかし、ビジネス側は長年培ってきた現行プロセスを捨てられず、IT側でもビジネスプロセスへの理解不足や、BPMに関する新しい技術に不慣れといった課題を抱えている。「多くの企業ではビジネス側、IT側共に大規模なBPMを推進できる状態にあるとはいえず、本格的なIT投資の前に助走期間が必要」と和田氏は説明する。
とりわけ悩みの種になっているのが、ビジネス主導の業務改革における変革意識の低さだ。BPM導入にあたりまず業務プロセスを整備する必要があるが、組織間の壁やメンバーの変革意欲の低さがネックになっている。しかし、プロセス整備の問題を解決しなければ、IT部門の見切り発車によるSOA(サービス指向アーキテクチャ)プロジェクトなどでいたずらにコストが膨らんでしまう。トップダウンの命令などで強いきっかけを与え、プロセス統括部署の設置や横断的なBPR(Business Process Re-engineering:業務プロセスの最適化)を実施することが問題解決の糸口になるという。
アプローチ方法として和田氏は「ビッグバン型」と「新陳代謝型」を提案する。前者は抜本的にプロセス全体を見直すやり方で、うまくいけば一気にプロセス革新が実現する可能性があるが、一歩間違えば効果なく多額のコストを浪費しかねない。
後者は、スモールスタートから段階的に業務プロセス改革を進めていくものだ。IT部門には長期間にわたりビジネス側を導くリーダーシップと目標達成までの正確なロードマップが求められる。
「どちらの方法を採択するにせよ、IT側がシナリオを書いてビジネス側を誘導することが最大の成功要因といえる。BPMはIT部門こそがリードすべきだ」(和田氏)
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明治学院大学 経済学部准教授