ただ定年を待つばかりのIT部門長は不要だ売り上げ増に直結するIT部門の作り方(1/3 ページ)

後ろ向きな気持ちで仕事をするようなIT部門とはもうおさらばだ。活気あふれるプロフィット部門にするためにも、IT部門長は何事もなく定年を迎えようなどという甘い考えは捨てよう。

» 2010年02月01日 08時15分 公開
[岡政次(ウイングアーク テクノロジーズ),ITmedia]

 「リーマン・ショック」から1年数カ月が経ち、経営再建の準備はできたもののデフレの影響で回復が減速している。もうコスト削減ばかりしていても面白くない、気が滅入るばかりだ。

 せっかく企業の一員として働くからには、自分たちも売り上げに貢献しお金を稼ぐ喜びを肌身で感じたい。後ろ向きな仕事ではモチベーションなど上がらないが、気持ちが前向きになるだけで人間の生産性は何倍にも向上する。これからのIT部門はそういう活気あふれるプロフィット部門であるべきだ。

 この1年、IT部門もコスト削減、派遣切りに追われ、残された少ない要員でシステムのメンテナンスに忙殺されて心身ともに疲れきっている。こんな状態がいつまで続くのか。このままでは企業のIT部門は崩壊してしまう。コスト削減という守勢に回っていても企業の収益は増えない。企業を成長路線に戻すにはIT部門も攻めに転じなければならない。

 コスト削減活動はもう終わりにして、これからはギアを切り替え、企業の売り上げ増、利益増に貢献するITを実践すべきである。

IT部門の組織改革を断行せよ

 これまでのIT部門は、事業戦略に基づき、それをサポートするシステムを構築、保守、運用することがミッションだった。しかし、ここ数年のIT部門はどうだろう。見える化、ホストマイグレーション、ERP(統合業務パッケージ)システムのバージョンアップ、仮想化対応、クラウド検討に加え、プラットフォームの変更や保守サポート切れ対応など、およそ本来のIT部門の役割とはほど遠い自己満足のテーマに忙殺されていたと言える。

 唯一の経営支援として取り組んだ「見える化」や「コックピットシステム」については、見栄えばかりを追いかけて高額の投資をしたが、目まぐるしく変わる現場の要望に対応しきれずに頓挫してしまっている。

 老朽化した基幹システムをオープン化し再構築するのは果たして利益を生むのだろうか。ホストの使いにくいオンラインシステムをWebシステム化すべきという既成概念にとらわれず、現場の収益活動を最大限に支援する仕組みとは何かという価値観で優先順位を決定すべきである。

 現場が喜んだり楽になることが会社の利益に直結するわけではない、逆に現場の作業が増えて負荷が掛かっても、収益につながるのであればそれを支援する仕組みを提供すべきである。

 しかし、これまで業務の現場から依頼を受けてシステム構築をしていた「受身のIT」から、突然、現場の潜在ニーズを掘り起こして収益を上げる仕組みを提案するという「攻めるIT」を求められても、IT部門一筋の草食系エンジニアにはどうしていいか分からない。まさか現場部門に「どうやって売り上げが増えるシステムを作るのでしょうか」とヒヤリングするわけにもいかない。

 一般家庭にインターネットが定着し、田舎に住んでいてもネットショッピングで翌日には商品が手元に届くし、地図や電車の乗り継ぎも携帯電話であっという間に検索できる。ITが間違いなく生活の利便性を飛躍的に向上させている。オンラインでの株取引や投資、ネットオークションなど、ITは個人消費者にとってもうかるツールになっている。

 企業の現場にもインターネットと同じようなサービスが提供できれば「もうかるIT」が実現できるのである。そのためにはIT組織の意識改革が不可欠なのだ。

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