クラウドは2000年代後半の登場以来、大きな注目を集めてきたが、技術の進展とともに完全に実用段階に進んできた。システム構築の際に優先的に検討する企業も増加している。しかしその反面、新たな課題も発生しているという。その新たな課題とは何なのか、そしてどのように対応すればよいのか、クラウド時代のサービスを支える各分野の「匠」たちに話を聞いた。
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クラウドが実用段階を迎える中、その利用形態も選択肢もますます多様化・進化している。まずは、クラウド、ネットワーク、セキュリティ、データセンター・IT基盤などクラウド時代のサービスを支える各分野の匠たちに、今の企業を取り巻く課題を教えてもらった。
クラウド黎明期からSaaS事業やPaaS事業に関わり続けてきたNTTデータ ビジネスソリューション事業本部 クラウドコンピューティング事業部 統括部長 中井章文氏は「クラウドに関しては、システム構築の際に優先的に検討する企業が7割となりました。クラウドは、完全に実用段階に入ってきたが、パブリック、プライベート、ハイブリッドなど多様な選択肢の中、どうしたら本当にコストを抑えられ、最適に簡単に使えるものか、悩んでいる顧客は非常に多いです」と現状を説明する。
クラウドと並んで、注目されるスマートデバイスの活用はどうか? ネットワーク分野の商材を企画・開発する、NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 ネットワークソリューション事業部 課長 松山武司氏は「スマートフォンやタブレット端末が爆発的に増えたことから、モバイル機器を導入したが何に使えばいいか提案してほしいという問い合わせが増えています」と話す。実際の活用・使い方を模索している企業が多いという。
「モバイルやクラウドといった新しいテクノロジーは、効果的な活用の仕方が難しい。欧米式の“どうぞご自由にお使いください”といったクラウドではなく、フルサービスの日本型クラウドソリューションが求められています」(松山氏)
一方、セキュリティに目を転じると、昨今のセキュリティ攻撃はますます多様化・高度化しており、その対応に追われている企業の姿がある。セキュリティを専門とする、NTTデータ 基盤システム事業本部 セキュリティビジネス推進室 部長 鴨田浩明氏は企業が直面している状況を次のように説明する。「セキュリティの分野でも、本来その専門家ではないIT部門がIDS(侵入検知システム:Intrusion Detection System)やファイアウォールを運用している顧客企業が多くありますが、最近では、IDSやファイアウォールで止められない脅威が増えてきています」
事業継続性に対する意識も依然として高い。NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 データセンタ事業部 部長 本城啓史氏は「クラウド利用が進む中、海外では郊外型のデータンセンターが主流だが、日本では都市型の需要が高い。東日本大震災以降は利便性がさらに重視され、その傾向が強まっている。問題が発生したときに、オペレーターがすぐに駆けつけることができることに対して、魅力を感じる顧客企業が多い」と語る。
クラウド化がもたらす課題についてもう少しフォーカスしてみよう。従来の情報システムでは、ハードウェア、アプリケーション、ネットワークなどの境界が分かりやすく、それぞれ個別に仕様を決めて構築・運用されてきた。しかし現在では仮想化が進んだことでそれらの境界があいまいになり、障害の際、原因の切り分けなどが難しくなっている。監視をしていて「何かおかしい」「スピードが遅い」といった場合、原因がどこにあるのか、IaaS、PaaSも利用していることで、特定が困難になることもある。各種サービスを組み合わせて使った場合、その上で動かすアプリケーションは自己責任となるが、自社のシステムや異なるレイヤーごとにベンダーを管理する高い運用のインテグレート力が求められる。
企業としては、できれば、コストを抑えつつ運用品質を向上させ、かつビッグデータなど今後企業が成長する上で大きな原動力になることが期待される分野に、自社のリソースを投入していくことを考えたい。そのためには構築から運用、監視はもちろん、問題発生時の対応まで、ワンストップで対処できるITパートナーをうまく活用することも有効な選択肢といえる。
本城氏は、グローバルでのITインフラ構築も同様だと言う。「日本から海外に進出する、あるいは海外のグループ会社の顧客が日本に進出する場合、言語、法制度、商習慣などが異なる環境で、最適なインフラやアプリケーションのコーディネートから運用まで、自力で実現し、パフォーマンスを発揮するのは、容易なことではありません。必要に応じ専門家をうまく活用することが重要になってきます」
セキュリティ面でも、高い専門性が求められる傾向にあり、鴨田氏は「近年のセキュリティ攻撃の高度化・悪質化を背景に、クラウド環境のセキュリティをどう担保するか大きな課題です。高まる脅威に対して、SOC(セキュリティオペレーションセンター)を開設したいという声も強いですが、幅広いアプリケーションに対応できるSOCを自前で構築・運用できる企業は多くありません」と話す。
これからの企業の情報システムにおいては、上記で見てきたように、実用段階に入ったクラウドサービスなどをうまく取り入れながら、新たに出てきた課題に対応するためには外部の力を活用するといった選択が、重要になってきているといえるだろう。
NTTデータは、こうして高まりつつあるITアウトソーシングサービスへの期待に応えようとしている。中でも注目されるのが、2014年7月にオープンした品川データセンターである。同センターには、関連部門からスタッフを集めた「ITアウトソーシング・オペレーションセンター」が同時に開設された。
「例えば、一般的にNOC(ネットワークオペレーションセンター)とSOC(セキュリティオペレーションセンター)は別々に運営されているケースが多いのですが、ITシステムの選択肢が多岐にわたり、ブラックボックス化されていく中で、システム全体のコーディネートやマネジメントを通じた、これまで以上に高度な対応が求められるようになってきています。そこで、品川データセンターでは、ネットワーク、データセンター、クラウド、セキュリティ、ファシリティなどの連携がよりスムーズになるように、これらインフラにかかわるすべての運用部隊を物理的に集結させました」と、本城氏は「ITアウトソーシング・オペレーションセンター」設立の趣旨を語る。さまざまな専門性を持った運用関係者が一堂に会すことで、トラブル時にもすぐさま連携しあい、スピーディに効率的に対応することができる。また、日常的な改善スピードも大幅に上がる。
品川という立地も大きな魅力だ。本城氏は「品川データセンターの場合、都内主要オフィスエリアと至近というだけでなく、通信配線用に作られた地下トンネルであるとう道に直結している。災害時にはネットワークレベルからの対策が打てるというNTTグループならではの優れたネットワーク環境が顧客の重要なシステムの安定運用を可能にする」と言う。
グローバルレベルのサービス実現に対する目配りも欠かさない。本城氏は、「国内外の顧客企業に安心して利用してもらうためには、国際標準に準拠しながら、日本品質のサービスを提供することが必要。品川データセンターでは、データセンターの仕様標準化を目指すグローバルな業界団体「Open Data Center Alliance」が提唱する利用者モデルに準拠し、ベンダー依存しないデータセンター・クラウドサービスを提供します」と胸を張る。このような特徴を備える品川データセンターを基軸に、SIやアプリケーション、運用管理を含めた付加価値とともに、安心のITアウトソーシングが実現可能である。
一方、クラウドサービスについても、顧客の多様なニーズに応えるべく、他社のサービスも含めたクラウド基盤の選定から複数クラウド基盤の統合管理・運用までの統合的なサポートを「クラウドブローカーサービス」として提供しており、複数のPaaSを組み合わせた利用が増えている。API化されたテンプレートにより顧客のニーズにあった個別PaaSをボタン1つで構築できる「Infrastructure as Code」という仕組みが可能になっている。GISやCRM、SFAなどを中心にエンタープライズ向けクラウドサービス「BizXaaS」のSaaSアプリケーションも導入が広がっている。
クラウドブローカーを提案する中井氏は、「NTTデータのSI力を生かしたマルチクラウドとカスタマイズを強みとしています。他社は、自前のクラウドにこだわらなければなりませんが、われわれはさまざまなクラウドを組み合わせながら、半完成品のテンプレートをベースに、残り半分をSIによりカスタマイズして提供します。顧客企業にとって最適なクラウド環境の組み合わせを提案することができるのです」と話す。
顧客とともに成長することを目指してきたNTTデータは、顧客のニーズを満たすべく、常に最も適した技術を組み合わせ、情報システムを構築・運用してきた。その強みは、クラウド時代になっても変わらない。急ピッチでグローバル化を進め、社員の過半数が外国人となった今も、このNTTデータのDNAは世界共通といえる。グループ企業間で、Cloud Global One Teamという、全世界地域横断型のプロジェクトを推進し、ワンストップでグローバルなサービスを提供するグローバルデリバリーモデルを構築し、国境を越えてベストプラクティスのソリューションを提案する。
中井氏は、顧客企業が競争上の個別優位を確保するための情報システムは今後も極めて重要で、個別対応するためのスクラッチ開発が完全になくなることはないと強調する。スクラッチ開発が必要な部分には匠の技を活用し、そうでないところには迅速で安価な共用サービスによるアウトソーシングとの組み合わせが求められるという。中井氏はあらためて、アウトソーシングとの組み合わせに関しても、総合力を生かした匠の技を生かしていく、と力を込めて語った。
コスト削減と競争力強化を果たしていくために、これからの企業の情報システムは、グローバル経済の中で規模の経済を実現しつつ、顧客企業の個別最適に応えなければならない。この矛盾したテーマを両立させる取り組みが多くの企業で重要になってくる。クラウド時代のサービスはその解といえるが、新たな課題を生み出す場合もある。そのような中、世界基準と日本品質を極めたデジタル時代の匠たちが、どのように課題に立ち向かい、新たなサービスを構想していくのか、今後の動向に引き続き注目したい。
中井 章文 氏
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 クラウドコンピューティング事業部 クラウドプラットフォーム統括部 統括部長
得意な業種:業種全般に対応
得意な分野:SaaS〜PaaS、クラウド基盤、GIS
メッセージ:ITがお客さま個別にスクラッチで開発する時代から、ネットワークを使ってサービスとして利用されていく時代に移り変わっていく上で、NTTデータのようなSIerがどう変わりどう機能していくべきかを模索して、次世代のIT社会へ貢献できるようにしていきたいと思います。
経歴:1989年NTTデータ入社。クラウド黎明期からSaaS事業やPaaS事業に従事。エンタープライズ向けクラウドサービスであるBizXaaSの立ち上げにも携わる。2012年から現職。
本城 啓史 氏
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 データセンタ事業部 グローバルアライアンス担当 部長
得意な業種:日系企業の海外進出(製造業、サービス業その他)
得意な分野:データセンター、プライベートクラウド、グローバルITアウトソース
メッセージ:皆様の価値あるインフラをしっかりと支えるデータセンターやプライベートクラウドを国内で提供していきます。日本国内だけでなく、海外でもインフラやその運用をJapan Qualityで提供するITアウトソーシングサービスを実現していきます。パブリッククラウドやSaaSなど、選択肢は増える一方ですが、お客さまの要件をしっかりと理解した上で、最適なサービス・技術を組み合わせて、お客さまに最適なITサービスを提供していきます。
経歴:1994年入社。入社後は技術開発本部にて、モバイル、セキュリティ、ICカードに関する研究開発に従事。2005年から2011年まで、米国シリコンバレーの子会社にて、IT業界調査やベンチャーとの提携支援に従事。2011年から現職。
鴨田 浩明 氏
NTTデータ 基盤システム事業本部 セキュリティビジネス推進室 セキュリティソリューション担当 部長(兼技術担当部長)
得意な業種:業種全般に対応
得意な分野:セキュリティ
メッセージ:セキュリティというと「守る」ことに注力しがちですが、守りすぎて情報の活用を妨げては、セキュリティがただのコストになってしまいます。「攻め」、つまりセキュリティを確保した上で、情報を利活用し新たな価値を生み出す仕組みをご提供することで、お客さまのビジネス拡大とチャレンジを後押しすることが私たちのミッションと考えています。
経歴:2000年NTTデータ入社。技術開発本部においてネットワークセキュリティに関する研究開発に従事。2003年Fraunhofer FOKUS客員研究員(ドイツ)、2004年Imperial College London客員研究員(イギリス)。2009年〜2011年経済産業省商務情報政策局に出向し、産業振興に関する政策の立案、東日本大震災後の電力規制に関する省令整備等に携わる。その後NTTデータに復帰し、2014年から現職。
松山 武司 氏
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 ネットワークソリューション事業部 営業統括部 ビジネス推進担当 課長
得意な業種:金融
得意な分野:ネットワークソリューション全般、ネットワークと親和性の高いソリューション
メッセージ:近年のネットワークインテグレーション案件では、モバイルのシステム利用提案依頼が半数を占めています。モバイル提案依頼の大きな特徴として、日本独特の仕様要求があります。当社としては、国内のお客さまの期待に応えるべく、日本文化に合うネットワークインテグレーションの提供を心がけています。また、新たなネットワークソリューションを日本人ならではの感覚で作り上げ、国内外のお客さまにご利用頂ける様、企画開発に日々挑んでいます。
経歴:1996年NTTデータ入社。メガバンク、地銀、生命保険、都銀などの金融機関システム提案、構築、運用、保守に従事し、2014年から現職。
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提供:株式会社NTTデータ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日