気持ちよく話して帰る道すがら、今日はおもしろかったなと思う。その中には相手の気配りが溢れている。どうすればおもしろい話ができるようになるのか。
「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、放送作家 戦略コンサルタントである野呂エイシロウ氏が登場。『「話のおもしろい人」の法則』をテーマに、おもしろい人のテクニックを紹介した。
美男・美女(俳優・女優)、政治家、社長の話は「つまらない」ものが多い。つまらない話の代表が、「俺の若いころは……」である。しかも戦後の話をされても分からない。また戦国武将のたとえ話や、やたらに坂本龍馬の話をされるのも退屈である。
さらに無名の先祖の話も困る。話す前からひとりで笑うのもやめてほしい。そのほか、天気の話、口がくさい、歯の治療跡が汚い、鼻毛が出ている、オチがない、つまらない話であることに気がつかないなども問題だ。
先日、聞いた社長の話もつまらなかった。前置きが長く、天気の話をする。自分の話ばかりで、業界を否定的に考え、ライバルをけなす。ペースを作ろうとして失敗し、盛り上げようとして逆効果。最終的には、何を言っているのか分からない。
それでは、おもしろい話を教えてほしいと言われるが、だれもおもしろい話を知りたいわけではない。どうすれば、おもしろい話ができるかが知りたいのである。漫才師になりたいわけでも、ダジャレで1番になりたいわけでもない。テレビに出てタレントになりたいわけでもないと思う。仮に出たいとしてもITmediaエグゼクティブの勉強会に参加してる皆さんなら、「ワールドビジネスサテライト」や「ガイアの夜明け」、そして「報道ステーション」などであろう(笑)。
まじめな話に戻ると、目的はおもしろい話でビジネスを成功させたい、恋愛を成就させたいということなのだ。
今日のボクは、午前中は朝5時からジョギングをして、6時からメールチェック、8時からスポーツクラブ、10時から歯医者、12時から編集担当者との打ち合わせをした。午後は、13時30分から一部上場企業でミーティングをし、15時から金融機関とミーティング、16時30分からも別の金融機関とミーティングをして、17時30分からタクシーの中で上場IT企業とミーティング。現在、この勉強会で話している。
打ち合わせやミーティングのすべてに、まったく違う「野呂エイシロウ」がいる。企業にあわせて、キャラクターを使い分けているのである。そのため、たまにクライアント同士が出会うと「野呂さんは別人のようだ」という話しになる。実はときどき自分でも自分を見失うことがある(笑い)。それはなぜか。キャラクターの使い分けを、明石家さんまさんから学んだためである。
そう思い始めたのは約15年前で、「さんまのまんま」や「恋のから騒ぎ」が絶好調だったころである。話し上手のイメージのある明石家さんまだが、実はほとんどしゃべっていない。よく観察してみると、実は7割を相手にしゃべらせて、自分は3割しかしゃべっていない。リアクションが大きいので、ずっとしゃべっているイメージがあるのである。
仕事でも、テレビでも、これほどまでの聞き上手に、これまであったことがない。明石家さんまさんの出る番組をすべて録画して、なぜその話をしたのかを考えながら番組を見て、自分の話と比べてどこが違うのかを調べたこともある。
直接本人から学んだわけではなく、テレビ番組から学んだのだが、自分がおもしろいと思う人を見つけ、徹底的に研究してみるのもひとつの方法である。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授