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【第4回】世にもおかしな日本のIT組織(4)〜ダウンサイジングで追った夢の代償三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(2/3 ページ)

1990年代後半の「ダウンサイジング」ブームは、ホストコンピュータをプラットフォームにしたシステム開発しか経験のないIT部門長には「打ち出の小槌」に見えたかもしれない。しかし、そこには思いもしない多くのリスクが潜んでいた。

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後手後手になった西暦2000年問題

 その1つが西暦2000年対応だ。これは本当に悲惨なものだった。コスト削減を目指して進めたはずのERPパッケージの導入と中途半端なダウンサイジングが、ホストコンピュータとのインタフェースを複雑にし、対応を果てしなく困難なものにしていた。

 実は、私の周辺では、2000年対応の前に、思い切ってホストコンピュータをマイグレーションしようという話もあったが、すでにタイミングを逸していた。もっと先を見て計画を立てていれば、こんな後手後手の対応にはならなかったはずだと思う。

 もちろん、一度始まってしまった流れを保守的な管理職が止められるはずもない。自分の任期の間だけは問題を起こさずに、そこそこ成果らしきものを出して、定年退職を迎えたいと考えるのは終身雇用の性だ。これは誰にも変えられない。大企業の管理職というのは、飛行機であれば、早めに着陸態勢に入って車輪を出している状態なのだ

そして流行ったアウトソーシング

 ERPの導入、ホストコンピュータの物理統合、ダウンサイングと聞くと、すごいプロジェクトばかりに思えるかもしれない。しかし実はこれによってITのコストは下がるどころか、逆に保守費用、システム維持費を増大させる結果になった。2000年対応が落ち着くころ、多くの企業がアウトソーシングを模索していたのは、これが引き金だったのである。

 企業としては膨れ上がったITコストをなんとか削減したい。そこでIT要員も含めて丸ごと分社化し、システム開発、運用業務を委託してしまえば、アウトソーシング会社のマネジメント力でITコスト削減できる。さらには、システムの全体最適、IT要員のスキル向上など、IT部門がこれまで抱えてきた課題を一気に解決できるチャンスと考えたのだ。

 しかし、IT部門の社員たちは冷静に自分たちの行く末をちゃんと見抜いていた。能力のある社員ほど、出向すると自分に将来はないと考え、キーマンは社内のコネを使って業務部門に異動していった。最初にIT部門のキーマンの流出が始まることになったのだ。アウトソーシングや子会社化が結果的に、IT部門の衰退を招くとはやはり誰も予測できなかったのだろう。

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