【第8回】世にもおかしな日本のIT組織(7)〜日本版ワークフローは「Wii」+「Fit」の発想で:三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(2/2 ページ)
紙と判子で意思決定がなされる日本のワークフローに、デジタル的な発想でいくら奮闘しても多勢に無勢。しかし、日本版ワークフローシステムの実現は不可能ではない。ヒントは任天堂の「Wii」+「Fit」。アナログで発想することだ。
どこでも決裁
最後に、ノートPCを持ち歩かない社長や部長といった決裁者に出張先でいかに決裁をさせるかを考えてみたい。PCを持ち歩けというのは、もう二世代(10年)ぐらい幹部の世代交替が起こらなければ難しそうだ。
そこで、誰もがいつも持ち歩く携帯電話に注目したらどうだろうか? 現在の携帯電話では、難しいかもしれないがスマートフォンならまだなんとかなるかもしれない。しかし2台も携帯電話を持ちたくないだろうから、何とか通常使う携帯電話のビューワで内容確認/承認をできるだけの表示機能を実現したいところだ。
今、携帯電話は凄い勢いで進化を続けている。もう電話というより携帯端末と呼んだ方が適切と思えるぐらいの機能を持っている。これまで携帯電話は営業職や物流業、修理業務など社外で利用する業務に特化して活用されてきたが、これを一般の業務システムの端末にも活用すれば、日本版ワークフローシステムの実現は近そうだ。
ここで提唱している日本版ワークフローシステムのイメージは、もしかすると任天堂がゲーム機「Wii」や「Wii Fit」で行ったようなユーザーインタフェースの発想と同じようなもしれない。コンピュータというデジタル的表現が得意な道具を、どこまでアナログ的な表現や動きで人と会話できるようにするか、これを訴求することが日本版ワークフローシステムでも最も重要なことなのだろう。
国産のワークフローソフトは、欧米パッケージのコンセプトや機能を追いかけてもしかたがない。日本の現場も幹部も、欧米とはそもそもビジネスのやり方が違うのだ。彼らに驚きと楽しさを与えるようなソフトウェアをつくってほしいものだ。
プロフィール
ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 協創企画推進室 岡政次(おか まさじ)
三重県出身1959年生まれ。1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍、10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらにシステム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。2007年4月、ウイングアークテクノロジーズ株式会社に入社。現在、経営・エンドユーザー・IT部門の「三方一両“得”」になるIT基盤構想を提唱し、「出力HUB化構想」を推進する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 偽装事件を引き起こす不健康組織16の兆候
「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」ができないのは、社員のスキルではなく、経営者の価値基準に問題があるという。その状況は社内に見られる16の兆候からチェックできる。 - 疲弊するIT部門(1)〜殿様IT部門が変われない理由
一般企業へのコンピュータの導入は昭和30年代後半に始まり、日本企業のシステム化の歴史や文化がつくられた。そして今、IT部門は殿様的立場からサービス部門として立場の逆転した。 - 「お子様役員」狂想曲――IT導入の本質を見極める
IT導入において、トップとCIOだけではなく、他の各部門役員の存在は、意外に大きなものである。信じられない「奇行」も笑って済ませることはできない。 - 上司がITにまったく関心がない!――どう付き合ったらいいのか?
直属の上司が最高財務責任者(CFO)になったが、このCFOはITにあまり関心がなく、何も干渉してこない。この先、どう付き合っていけばいいのか?