「メディアトレーニングは防災訓練と同じだ」――PRにおける経営者の心構え
企業がPR活動をする上で、メディアとの関係性は切り離すことのできないテーマである。それゆえ、いかにメディアを有効活用するかが経営者に求められる。
企業の印象や評価は、創業者から社長、営業マン、受付に至るまで、所属している「人」で決まることが多い。とりわけ経営層には、多くの人々と接する機会があるため、より高い人的スキルが求められている。
3月13日、早稲田大学で企業の経営層を集めたエグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム(ELForum)の「第20回 インタラクティブ・ミーティング」が開かれた。企業広報に強いPR代理店のプラップジャパンの矢島尚会長がテレビや新聞などメディア取材に対する心構えや立ち居振る舞いについて語った。
企業は、さまざまなステークホルダー(利害関係者)によって成り立っている。株主、金融機関、パートナー企業、一般消費者、報道機関など幅広い領域に渡る彼らとコミュニケーションを図り、より良い関係を築くことがPR活動である。「(企業で)内部告発が起きるのは、社内コミュニケーションが良くないからだ」という矢島氏は、社員もステークホルダーとしてとらえ、周囲との良好な関係構築の重要性を指摘した。
中でも重要なのが「メディアとの関係」(矢島氏)という。かつて小泉政権が衆院選でとったPR戦略を支えたり、謝罪会見を含め数多くの企業のPR部分を演出するなどした経験から、矢島氏は「経営層にとってメディアトレーニングは必須だ。防災訓練と同じで定期的に身体で習得しないといけない」と強調した。米国では、部長クラスであれば少なくとも年に1度はメディアトレーニングを受けているという。
そのほか、メディアとのコミュニケーションを円滑にする秘訣に、正直さを挙げた。友好関係を構築し、うそをつかずに「分かりません」と言うなど基本的なことが重要だという。
矢島氏は「メディアにはさまざまな人間がいて、時には挑発的な発言を受けるかもしれない。それでも不愉快にならず感情をコントロールするのが経営者だ」と見解を示した。
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