築城に学ぶ 日本と欧米企業の「横展開力」:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート
日本特有の「暗黙の了解」を見える化することが、企業がビジネスをグローバル展開する上で重要になるという。
アイティメディアは3月18、19日の2日間で、企業の経営層に向けたイベント「第4回 ITmedia エグゼクティブセミナー」を開いた。初日のセッションでは、アプリソ・ジャパンのテクニカルディレクターを務めるジェームス・モック氏が、「見える化」をテーマに現場の強みを横展開する方法について語った。
同社は、製造業向けにビジネスプロセスの管理システムを提供している。中でも実行管理プラットフォーム「FlexNet」を主力製品に多業界、グローバルでビジネスを拡大している。モック氏は、築城を例に日本と欧米のワークフローの違いを説明した。
「日本の城壁は形もさまざまで、作業者はその場で互いにコミュニケーションをとりながら積み上げていく。そのため、前後の状況を把握しながら臨機応変に対応する必要がある。一方、欧米では標準化された石を指示通り積み上げるので、作業者は互いに調整する必要がない。途中で人が変わっても作業を継続できる」(モック氏)
言い換えれば、日本は現場ごとに「暗黙の了解」で成立する業務プロセスが多く垂直統合されている。欧米は、仕組みが共通化されており水平展開しやすい。モック氏は「柔軟に対応できるのがグローバル企業の証だ。日本が現場力を横展開するためには、暗黙知を“見える化”する必要がある」と強調した。
自動車メーカー・Volvoの建設機械グループであるVolvo CE(Construction Equipment)は、FlexNetの活用により横展開に成功した。従来、工場での作業指示はあらかじめ印刷された紙で行っていたため、突発的な作業には対応できなかった。同社のマザープラントで、トヨタ方式を採用していた韓国のチャンオン(昌原)工場にFlexNetを導入したことで、各生産ラインのタクトタイム配分や予実管理などが把握できるようになり、後にグローバルで情報共有が進んだという。
横展開を成功させるポイントについて、モック氏は「まずはコアとなる部分をしっかり作ることが重要」と意見を述べた。
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個人や組織の能力というのは、1日で変わるものではない。地道な努力を積み重ねてこそ変わっていくものだ――早稲田大学大学院教授でローランド・ベルガー会長の遠藤功氏は、「第4回エグゼクティブセミナー」で、「『見える化』による組織の“くせ”づくり」と題した基調講演を行った。
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